北の紙箱屋さんと、エゾマツの紙に込められた想い

エゾマツクラフトのサンプルを手にした時、こだわりのあるパッケージ、木の温かみを感じる深い色、質感のある表情にわくわくが止まりませんでした。それと同時に、どんな風に、どんな想いで作られた紙なのだろう?と聞いてみたい思いに居ても立ってもいられず、エゾマツクラフトを発案した札幌のモリタ株式会社、近藤篤祐(あつひろ)さんにお話を伺いました。

Shop Data

モリタ株式会社
住所 札幌市白石区中央2条3丁目2番17号
電話番号 011-831-1151
URL http://www.hakop.jp

エゾマツクラフトのサンプル。デザインシートを組み立てると木の箱になります。

エゾマツクラフトの何よりの特徴は、紙の表面に北海道のエゾマツの端材が散りばめられているところ。牛乳パックやダンボールなどのリサイクル再生パルプを100%使用した再生紙です。リバーシブルなので、使うシーンによってどちらを表にしても木の表情が垣間見えます。紙の色はうす茶、こい茶、黒茶、の3色。8層もの面を重ね合わせたしっかりした厚手の紙です。

北海道らしい紙をつくりたい

エゾマツクラフトを生み出したモリタ株式会社は、昭和7年創業の老舗紙箱メーカーです。近藤さんは紙箱を製造していくなかで、「北海道らしさが伝わるようなパッケージをつくれないだろうか」と日々考えていました。そこで、「北海道にしか生育しないエゾマツを入れることで、北海道らしい紙がつくれるのでは」と思いついたところから、このプロジェクトは始まりました。

ちょうどその頃、近藤さんは津別町の加賀屋木材と知り合います。エゾマツやトドマツを中心に、原木の加工から木製品の開発販売まですべて自社で行い、環境に配慮した間伐材を余すところなく使用している木材会社です。同社のエゾマツの端材を紙に漉き込む手法を使えば、北海道らしい紙が生み出せるはず。そう考えた近藤さんは、以前からお付き合いのある大阪の製紙会社「大和板紙」と共に、実現に向けて動き出しました。

色や質感、厚さなどは、札幌のデザイン会社COMMUNEの上田亮さんととことん追求しました。木、紙、箱、デザインのプロが集結し、手法は確立されていきました。

近藤さんが特にこだわったのは、紙の色をどう出すかということ。エゾマツの粉末そのままでは、色が沈んできれいに発色しない。木の繊維感や色をどのように出すか…。打ち合わせやテスト加工を1年半繰り返し、試行錯誤の末、3年かけて理想の「エゾマツクラフト」を完成させました。

パッケージの紙として、茶色はあまり見かけない色でしたが、高級感を感じる仕上がりになりました。
針葉樹の皮を削いだ時のイメージを抽象的に表現したロゴマーク。アルファベットの「e」の要素も入っているとか。

2014年にリリースしたエゾマツクラフト。近年では高級ホテルのアメニティのパッケージや、北海道内各地のスイーツパッケージなど、「紙からも北海道らしさを伝えたい」というニーズに応える機会が増え、実績を重ねてきました。

「パッケージは脇役だけど、中身の魅力を表現できる。作り手たちのこだわっているストーリーやその魅力を伝える手伝いができるし、パッケージに興味を持って購入してくれた人からの声を聞けることがうれしい」と近藤さんは話してくれました。

COMMUNE上田さんデザイン、札幌のRITARU COFFEEの燻製珈琲のパッケージ。エゾマツクラフトに黒のグラデーション印刷がかけられています。珈琲豆も北海道の木で燻製しているそう。
(写真提供/モリタ株式会社)
同じくRITARU COFFEEの珈琲ゼリーのパッケージ。角度によって光沢のある印刷がゼリーの中身を思わせます。

まだまだ、つくりたい紙はたくさんある

スイーツや珈琲のパッケージなど、ローカルでこだわりを持ってつくられた商品を、エゾマツクラフトが包む。パッケージは脇役かもしれないけれど、時に主役になりうる程、中身の魅力を伝えてくれることがあります。そんな時は、やはりどちらからも作り手の強い思い入れを感じるのです。

「これからも、第2弾、第3弾と続けていきたい」。今後つくりたい紙のアイデアを秘めている様子の近藤さん。自身もわくわくしながらものづくりをしている様子が伝わってきました。

第2弾は、どんな紙ができるのでしょう?
エゾマツクラフトに続き、北海道らしい紙が完成する日がとても楽しみです。

名刺を印刷してみました。濃い紙色に白いインクが映えます。

この記事を書いた人

原優美子

原優美子

wakuwakudesign所属。エディトリアルデザイナー。自然豊かな北海道に惹かれ、大阪から移住。特に好きなのは芽室の畑の風景。趣味はお菓子づくり、紙モノ収集。休日は自然の中へドライブ。