
七飯岳のふもとにあるBitteは、オーガニックの食品と日用品が並ぶ、小さなはかり売りの店。店主の森奈央さんは、ドイツでオーガニックに出合い、日本でももっと気軽に取り入れられるようにとこの店を開きました。人と環境に優しい商品を豊富に揃え、選ぶ楽しみも大切に。オーガニックを身近に感じてもらうためのきっかけづくりを続けています。(取材時期 2025年6月)
Shop Data
Bitte
住所 七飯町上藤城395-8
開館時間 水~金曜 12:30~17:30 土、日曜、祝日 10:00~15:00
定休日 月・火曜、土日祝不定休あり
Instagram @bitte.bio.life

木漏れ日に包まれた、小さなはかり売りの店。
七飯町の街並みを望む、七飯岳のふもと。小道を抜けると、木漏れ日に包まれた真っ赤な壁と扉の店があった。ここはBitte。森奈央さんが営む、オーガニックのはかり売りの店だ。


小さな店内には、食品から日用品まで、暮らしに必要なものがずらりと並ぶ。調味料にパスタ、ドライフルーツにお茶、石鹸などなど。塩だけでもたくさんの種類があり、どれも試してみたくなる。眺めていると、森さんが笑顔で教えてくれた。「この塩はお刺身につけて食べるととてもおいしいんですよ。それに、水に溶かしてスプレーするとダニ予防にもなるんです。本当に重宝します!」。
元々はオーガニックに関心がなく、「体に良いんだろうな、くらいの認識だった」という森さん。そんな森さんがこの店を営むまでに至ったのは、ドイツでの暮らしがきっかけだった。
ドイツでオーガニックと出合って知った、選び取ることの大切さ。
森さんがオーガニックについて知ったのは、2018年からの2年間、親子留学のためにドイツで暮らしていていた時のこと。「ドイツでは、スーパーに並ぶ商品の60%以上がオーガニックでした。その上、価格もあまり高くない。それでオーガニックのものを選ぶようになったら、体調や肌質がどんどん良くなって。日々取り入れるものをきちんと選ぶことって、ちゃんと意味があるんだ!と気づきました」。

オーガニックについて学び始めると、さらに新たな発見があった。「ドイツの人々は、環境問題や社会問題の観点からもオーガニックを選択していました。それが衝撃的でした」。
食べ物の背景を辿れば、土や水といった自然や生産者の存在に結び付く。オーガニックに出合い、そのつながりに目を向けることの大切さにも気づいた。「環境や社会にとって良いものが何かを考えて行動すれば、巡り巡って自分たちが良いものを手にすることができる。オーガニックを選ぶことで、その循環を生み出せるんだなって」。
日本でも、オーガニックを暮らしに取り入れたくて。
その後、コロナ禍をきっかけに2020年に日本へ帰国した森さん。ドイツに比べると、オーガニックのものは格段に手に入りづらくなった。家庭菜園などで自給していたが、次第に「オーガニックをもっと広めたい」、「困っている人たちの助けになりたい」という思いを抱くように。こうして2022年4月、Bitteをオープンさせた。
住宅街から現在の場所へ住まいと店舗を移したのは、2025年4月のこと。「自宅の車庫を改装して店舗にしました。物を販売するだけじゃなくて、暮らしの中で実践できることを伝えられる店でありたくて」。
確かなものを選びながら、「わくわく」感を忘れずに。
Bitteに並ぶ商品は、すべて森さんが選び抜いたもの。地元の生産者を応援したいという思いから、地域で作られたお茶やビネガーもセレクトしている。「自分で食べておいしいと思えたものを選んでいます。生産者さんのところにも足を運んで、なるべく自分の目で確かめるようにして」。


写真右/七飯町の野草でハーブティーを作るgreen樹のお茶。Bitteオリジナルブレンドも購入できる。
写真左/背景や効能について、ポップでも詳しく伝えている。
はかり売りのスタイルを選んだのは、「無駄なものを出したくない」という思いから。「生活の中で、プラスチックのゴミが多いなと感じていて。便利ではあるけど、やっぱり減らしていきたいですよね」。

安心安全で、かつ環境にも配慮した上で、森さんが大切にしていること。それは店に入った時の「わくわく」感だ。いろいろなものを少しずつ、欲しい分だけ選ぶ自由さや、無駄なく買い物ができるうれしさ。そんなはかり売りならではの楽しみにあふれている。「自分好みのグラノーラも作れちゃうんですよ。オートミールやナッツ、ドライフルーツを好きな分量で混ぜて入れて、帰ったら焼くだけ。はかり売りだからできる買い物の仕方ですよね」。
知識や情報を届けて、暮らしのヒントも持ち帰ってほしい。
Bitteでは定期的にワークショップや講座を開催し、オーガニックに関心のある人々が学び、交流できる場を作っている。「食べ物の背景を知ったら、オーガニックのような環境や社会にとって良いものを選択することの大切さに気づいてもらえると思うんですよね。それを再認識してほしくて」。
何かを買う時には、表示を確かめてから購入すること。容器の素材を気にしてみること。そんな選択が、自分たちの暮らしを変えていくはず。「『買い物は投票』という言葉もあるように、一人ひとり選ぶことが大切だと思っています。そのきっかけを作りたい」。

ここを訪れる人は、Bitteでさまざまなきっかけやヒントを手にしていく。「たくさん話しているうちに、みなさん元気になってくれるんです。アレルギーやアトピーといった悩みを抱えている方もいるので、一緒に考えたり、提案したりして。お客さんにとって、暮らしのヒントになっていたらうれしいなって」。
Bitteを、オーガニックを広げる「システム」のひとつに。
Bitteという場所について、森さんは「システム」と表現した。「この店に買いに来ることで、オーガニックなものが広まったり、人と人とのつながりが生まれる。この場所があることで、そんなオーガニックの輪を広げていくシステムが生まれていると思っています。その輪をもっと広げて、オーガニックなものがある暮らしをあたりまえにしたい」。

「これからは、ここと同じ体験ができる場所を増やしていきたいです。いつか2号店を建てたいし、ほかのショップの一画にもBitteのものを置く、というのもやってみたい」と、これからの目標を話してくれた森さん。オーガニックを、もっと身近なものに。オープン当初から抱くその思いは、少しずつ、けれど確実に叶いつつある。

野草茶にラズベリービネガー、石鹸やグルテンフリークッキーなど、地元の生産者さんの商品がオススメです!
また、Bitteでは定期的に「オーガニック地域講座」を行っています。2026年からはオンラインでも講座を行う予定です!先ずはオーガニックを知ることから始めてみませんか?

