大型チェーン店や個人店のオープンなど、近年盛り上がりを見せている道東の中標津町。そんな町の外れに、札幌からUターンしてきた夫妻が営むレトロなカフェがある。雰囲気たっぷりの建物は、取り壊す予定の両親の持ち物を手ずから改装し造り上げた。2人の思いとセンスがいっぱい詰まった〈ヒゲとハナウタ〉を訪ねて。
Shop Data
ヒゲとハナウタ
住所 中標津町東36条北1丁目12-1
電話番号 0153-70-4533
営業時間 9:30~19:00(L.O.18:00)
定休日 日・月曜、祝日
URL https://www.instagram.com/hige_to_hanauta/
開店して間もなく道内外の人気店に
ボーン…ボーン…。重厚感のある古時計の音が空気を揺らし、店内に響く。音のする時計のほうへ目をやれば、隣の壁紙や照明、椅子やレトロな食器など、あちこちへの小さなこだわりが自然とこちらに伝わってくる。「おいしかったよ」。「また来るね」。そんな声に、マスク越しでも伝わるとびきりの笑顔で応える2人。ジャズが流れる店内に、穏やかで賑やかな喫茶店の空気が満ちている。
ヒゲとハナウタは、2019年12月に中標津町の中心部の外れに開店した。オープンして1年経たないというのに、店主の人柄や内装、料理のおいしさが話題を呼び、地元客だけでなく町外からも人が集まっている。
別海町出身の夫の宮坂泰良(たいら)さんは、元々札幌市で小さな飲食店を営んでいた。子どもが生まれても、顔を合わせられないほどの忙しさ。「もう少し、家族との時間を作りたい」。ちょうどその頃、現在の店舗である妻の沢(さわ)さんの実家が取り壊しの危機に直面していた。父親から「ここで何かやってみないか?」と声をかけられたとき、新しい次のステージへの展望が一気に開けたという。昔から2人で店をやりたかったこともあり、タイミングが重なって移住を決意。あらゆる転機を楽しみながら、この場所をゼロからつくり上げていった。
人気店で忙しくはありつつも、夜には家族みんなでご飯を食べ、週末には道東の大自然の中へ遊びに行く時間ができた。2人の心にできた余裕は、確実にヒゲとハナウタを包むゆったりとした雰囲気を作っているだろう。
人気の秘密は、内装や雰囲気だけじゃない
食事はすべて手づくりで、ほとんど注文を受けてから作り出す。トロトロのオムライスや10数種類のスパイスが溶け込んだカレーなど、人気商品は売り切れることもあるそう。
2人が目指すのは、「一度だけでなく、また来たいと思ってもらえる店づくり」。その思いは、来た人の胸にきっとしっかり届いている。
「スロウ日和をみた」で、コーヒーをご注文のお客様にディスプレイ用のマグカップ(firekingなど)の中からお好きな一つをお選びいただけます。
この記事の掲載号
northernstyle スロウ vol.65
「羊の傍らで」
可愛いだけではなく、いのちの尊さをも身をもって教えてくれる羊たち。幸せを感じたり、感謝したり、悩んだり。羊との、それぞれのつき合い方。