5人の店主の個性が光る、不思議な店〈ヒミツキチこひつじ〉

斜里町に拠点を構える5人の店主が営むヒミツキチこひつじは、少し不思議なカフェ。薪窯パン屋、うどん・甘味処、おにぎり屋などが日替わりで出店し、週末を中心に間借りカフェやガレージセール、アーティストの作品展などさまざまなイベントが開かれる。賑やかで、居心地が良くて、つい長居してしまう。そんな場所だ。(取材時期 2023年3月)

Shop Data

ヒミツキチこひつじ
住所 斜里町本町32-7
営業時間 11:00~18:00
営業日 水・土・日曜

Instagram @kohitsuji_shari
URL https://siretoko-kohituji.com 

思い思いに気持ち良く過ごせるコミュニティカフェ。

事の発端は、2020年の秋。JR斜里駅からほど近い商店街の裏通り。その一角にひっそりと建つ築40年の一軒家に、小和田久美子さんが一目惚れをしたのがはじまりだった。「すっごい可愛いところ、見つけちゃった!」。町の郊外で営んでいたパン屋「メーメーベーカリー」を閉め、新しくパンを売る場所を探していた小和田さん。ここにみんなでカフェを開こうと、仲間たちに声をかけた。そうして集まったのが、パン屋時代に一緒に働いていた小島扶佐子さんと宍倉美鶴さん、おにぎりの移動販売を始めようとしていた下山由季乃さん、移動古書店を営む中山よしこさんだった。

ヒミツキチこひつじの5人の店主。左から、小和田久美子さん、中山よしこさん、小島扶佐子さん、宍倉美鶴さん、下山由季乃さん。各々の看板を手に店の前にて撮影。

提供するのは、個性豊かな店主たちによるさまざまなメニュー。薪窯パンから始まり、ドリアやおにぎりなどの軽食、月替わりのスイーツやうどんなど。中山さんが企画したイベントが店内で開かれることもある。

2022年4月のオープンからこれまでを振り返って、「面白いよね」と頷き合う5人。実感しているのは、幅広い客層。旧メーメーベーカリー時代の客。子ども連れ。電車で斜里を訪れた旅人。広過ぎず、狭過ぎない店内は、曰く「人が仲良くなりやすいサイズ感」。客どうし、そしてもちろん店主たちとも。話しかけやすく、それでいて自分の世界にも入れる空間。「店と客の境をなくしていきたい」。そう考える5人だからこそ作り出せる居心地の良さ。それがヒミツキチに人が集まる理由なのだろう。

もうすぐ閉店の時間。ところが店主たちのお喋りは止まらない。新作メニューのアイデアからイベントの企画、他愛もない世間話。きっとこの場所は何よりも、彼女たちにとっての「居心地の良い場所」。楽しそうな表情がそう教えてくれた。

スロウ日和編集部

パン屋でカフェで、ギャラリーで図書室で‥‥。正体不明だけど抜群に落ち着く、「場」の魅力を持ったヒミツキチこひつじ。「今日は何屋さんなの?」と毎回わくわくしながら訪ねます。

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.75
「風土を描く生地の世界」

テーマは、北海道の「テキスタイル」。織りや紡ぎ、シルクスクリーンや天然染色などを手がける作り手の物語と、北国らしい生地の世界を訪ねて。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。