風と海が織り成す自然を体感。襟裳岬を巡る旅へ。〈えりも町〉

日高の最南端に位置するえりも町は、海に面した風のまち。国内でも有数の強風地帯として知られています。ですがえりもらしさは強風だけではありません。点々と岩が続く岬の壮大な景色、地元ならではのおいしい海産物、そして1年を通して出会える可愛らしいアザラシたち。夏はもちろん、冬でも日帰りで気軽に楽しめる、雄大な自然を全身で感じるスポットを紹介します。(一部写真提供/鈴木亜室さん)(取材時期 2024年6月)

spot.1 「風の館」で岬の景色とアザラシを眺めて

まずは襟裳岬の先端にある「風の館」へ。えりもを象徴する「風」と「アザラシ」をより楽しめる博物館です。

地面に埋もれる様に作られた、渦を描く不思議な建物は、風が円柱状の障害物に当たったときにできる「カルマン渦」をイメージして作られています。館内では襟裳岬周辺で暮らす動物たちに関する展示や、襟裳の強風を体験できる施設があります。

奥に進んで、広いガラス張りの展望室へ。襟裳岬の景色をゆったりと楽しむことができます。

ここで見逃せないのが、先端から続く岩場で寝転ぶアザラシたちの姿。えりもは国内の沿岸で唯一アザラシが定住している地域のため、1年を通してアザラシを観察できるのです。早速望遠鏡を覗いてみますが、なかなか見つけられません。えりも町で自然ガイドを担当している鈴木さんに教えてもらいながら探していると、岩のように見えていたものが動き出しました。アザラシです!

ぽってりしたフォルムとのんびりした動きがなんとも可愛らしく、目が釘付けになってしまいます。アザラシたちにとってのお気に入りの岩が3ヵ所あるらしく、そこに集まっていることが多いそう。じっくり眺めていると、カモメの子どもたちも見つけました。短くフサフサした茶色の毛は、まるでキウイのようです。

自由に過ごす動物たちの姿は、いつまでも見ていても飽きません。しばらくの間、その姿を観察していました。

建物を出て岬の先端へ。険しい崖と吹き付ける強い風、そして荒々しく打ち寄せる波。自然の持つ力強さを全身に感じます。

観光客だけでなく、中にはちらほらと地元の人の姿も。襟裳岬は、まちの人にとっても元気をもらえるパワースポットになっているようです。

spot.2「ふれ愛館」で地元のおいしさをたっぷりと。

海を眺めながら車を走らせ、昼食は「ふれ愛館」へ。

2006年に閉校となった「目黒小中学校」の校舎を再利用したレストラン。どこかなつかしい雰囲気の店内では、地元産の食材を使ったランチが楽しめます。

イチ押しはえりも産日高昆布を衣に混ぜてカラリと揚げた、『えり守空上げ』。昆布が良い風味とカリカリとした食感をプラスしてくれる、ひと味違った唐揚げで、定食やカレーでいただけます。ボリュームたっぷりなのもうれしいところ。

さらに季節によっては旬の魚の定食も。この日いただいたのは『えりも焼き魚 八角定食(1,200円)』。甘みとうま味が詰まったぷるぷるとした身は、一度食べたらやみつきになります。こうして市場にはあまり出回らない魚が食べられるのも、海沿いのまちならではです。

spot.3 「コンブボートクルーズ」でえりも岬の「端っこ」へ。

さらに、産業と自然を一度に体感できるアクティビティもあります。それが「コンブボートクルーズ」。現役の昆布漁師が操縦するコンブ漁船で、えりもの海を周遊するツアーです。

日高昆布の一大産地であるえりも町。町内には砂利を敷き詰めた天日干し場が点在し、最盛期の8月にはあちこちでコンブ干しの様子が見られます。

「自分たちにとってはあたりまえの風景も、外から来た人にとっては特別。海を船で案内したら喜んでもらえるんじゃないかって、構想を温めていたんです」と話すのは、船長の村田裕昭さん。そんな村田さんの構想と「地元ならではの観光コンテンツを生み出したい」というまちの思いが合わさり、生まれたのがこのツアーです。

襟裳岬の先端部から出発し、点々と続く岩場をグルリと回るルート。気ままに過ごす可愛らしいアザラシたちを、間近で見ることが出来ます。

写真提供/鈴木さん

もう一つの見どころが、日高山脈の「端っこ」を見られること。実はこの岩場は日高山脈の一部。折り返し地点の岩こそが、その先端なのです。海底で2つのプレートが衝突してできたという地形の成り立ちを実感します。

強風地帯のため船を出せない日も多くありますが、えりもらしさを存分に体感できるこのクルーズツアー。岬で感じた風を、海上でさらに強く感じてみてください。

1日を振り返って

1年を通して強風が吹く襟裳岬。この場所に抱いていたのは人を寄せ付けない厳しいイメージでしたが、壮大な景色をじっくりと眺め、地元の人々や可愛いアザラシたちに出会ううち、この自然と共に育まれてきた景色や営みがあるのだと気付きました。強い風や猛々しい海は、自然が持つ大きなエネルギーの象徴。ここで1日を過ごし、パワーをもらえた気がします。

出会った地元の人たちに暮らしについて尋ねてみると「特産品である昆布がすぐに乾く」、「子どもたちのランニングの体勢が低い」、「昔は大きな凧を上げるお祭りがあった」など、さまざまな「えりもあるある話」が。強風の中での生活は大変だろうと想像していましたが、人々はこの環境と共存し、まちの産業にも活かしてきたのです。

風と海が作り出す雄大な自然と、そこで暮らすアザラシたち。そんなえりもの魅力を探しに、また足を運びたいと思います。

スロウ日和編集部

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好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。