羽を休める渡り鳥たちを眺めて・秋の湖編

枯れ葉が舞い、肌寒さを感じ始める10月末。これまで冬、夏と訪れた小清水町へ、再びバードウォッチングに行きました。秋は鳥たちにとって渡りの季節。越冬地へと向かう過酷な長い旅の途中、渡り鳥は北海道の各地で羽を休め、また飛び立ちます。小清水町にある濤沸湖も、その様子を観察できる場所の一つです。遮蔽物のない湖は、初心者にもやさしい絶好の観察スポット。鳥たちが群れを成して空を羽ばたく様子や、湖上で休息する様子など、これまで見たことがなかった鳥の姿にたくさん出合うことができました。※野鳥の写真提供/小清水町観光協会(取材時期 2024年10月)

Spot.1 濤沸湖

「今日は湖で観察してみましょう」とガイドの湯浅さんが連れて行ってくれたのは濤沸湖。四季を通して約250種もの野鳥が訪れる湖です。繁殖期を終えたこの季節に見られるのは、主に冬に備えて南下する渡り鳥たち。繁殖地から越冬地へと長い時間をかけて移動する鳥は、旅の途中で羽を休めます。その休息地の一つが濤沸湖なのです。

キツネなどに襲われる心配のない湖は、鳥にとって絶好の休息スポット。耕作地で収穫後の落ち葉や葉くずを食べては、湖に戻って休む、を繰り返し、また長い旅を始めるためのエネルギーを蓄えます。現在の時刻は10時。朝ごはんを終えた鳥たちが湖へ戻り、休憩を始めている時間帯だそう。

網走市との境目にある平和橋で観察をスタート。東西に長い濤沸湖のくびれた部分にかけられた橋で、水面が目の前に広がり、鳥の姿をより近くで見ることができます。

早速水辺に目をやると、点々と無数の黒い影が。なんだろうと望遠鏡で覗いてみると…驚くほどの数の鳥! ヒシクイという、国の天然記念物にも指定されている水鳥です。「何十羽もの群れに見えますが、移動自体は家族単位で行います。集まって情報交換をしているのかもしれませんね」と湯浅さん。危険も多い旅の途中、きっと鳥たちも情報収集をしているのでしょう。「この餌場は良かったよ!」「あっちに敵を見つけたぞ」なんて会話を想像してしまいます。

ふと上空に目をやると、東の方角から40羽ほどのヒシクイの群れがこちらへと向かってきていました。綺麗な「く」の字の隊列を組み、高度を下げながら近づいてきます。バックには秋の朝の淡い青空と色づいた木々。まるで絵画のような光景です。

そのまま橋の東側を眺めると、湖の真ん中に4羽の白鳥を見つけました。そのうち2羽は身体がグレー。この初夏に生まれたばかりの子どものようです。「白鳥も家族単位で行動します。親から子へとルートが引き継がれていくんですよ」と湯浅さんが教えてくれました。家族みんなでゆらゆらと漂う姿は、なんだか微笑ましく見えました。

木や草など、遮るものがほとんどない湖。まだまだ初心者の私でもとても観察しやすく、鳥を見つけやすかったのはもちろんのこと、さまざまな行動も見ることができました。カモが草を食べるために頭だけ水に突っ込んで浮いていたり、ミコアイサがバタバタとしぶきを上げて水浴びをしていたり、オジロワシに驚かされたヒシクイたちが一斉に飛び立ったり…。鳥によって羽ばたき方が違うことにも気が付きました。彼らの生活の一部をよりつぶさに観察できたおかげで、鳥への親しみがグッと増した気がします。

まだまだ見ていられるなあ、と観察を続けていると、「来ましたよ!」という湯浅さんの興奮した声。再び上空を見ると、ヒシクイの群れがちょうど頭上を通過するところでした!

白いお腹を見せながらギャハギャハと鳴き声を上げながら飛ぶヒシクイたちの姿は、真下から見ると迫力満点。湖の上にいるからこそ出合える光景を、目に焼き付けました。

Spot.2 オホーツクの村

続いては冬にも訪れた、オホーツクの村へ。

紅葉のピークは過ぎているものの、冬の入り口に差し掛かった森もまた哀愁があり良いもの。枯れ葉の絨毯を歩き、カサカサと音を立てながら散策路を進みます。

視界の開けた湖とは打って変わり、鳥の姿を見つけるのが難しい森の中。その分、鳴き声に耳を澄ませたり、小さな姿を見逃すまいと木々の間に目を凝らしたり、五感を研ぎ澄ませることが必要です。時折立ち止まりながら、そこにある自然をじっくりと味わいます。

耳に入った「ビービー」という音を頼りに探し、双眼鏡を覗いてみると、そこにいたのはハシブトガラ。ぷっくりと丸い姿が愛らしい小鳥です。枝の上を忙しなく動いていました。

先ほど見ていた渡り鳥と違い、小さな身体でちょこまかと動き回る森の小鳥たち。その可愛らしさと見つけられたうれしさで、思わず笑みがこぼれます。散策も心地よく、ほくほくした気持ちで森での観察を終えました。

Spot.3 ひつじ日和

気付けばお昼時。冷えた身体を温めようと、道の駅の隣にある「カレーカフェ ひつじ日和」へ。可愛らしい小屋の扉を開けると、店内はスパイスの香りで満たされていました。

注文したのは「よくばりカレー」。スープカレーとキーマカレーがあいがけされた、一皿で二度、いや三度おいしいメニューです。

Cap/『よくばりカレー(1,250円)』。10種類のスパイスを使用した「極楽スープカレー」と、地元産の野菜をたっぷり使った「ひき肉カレー」の両方を楽しめる一皿。

マイルドなキーマカレーに対し、スープカレーはちょっぴりスパイシー。一緒に食べるとちょうど良い辛さになり、新たなおいしさが生まれました。野菜がごろごろとトッピングされているのもうれしいところです。食べ終わるころには、身体はすっかりぽかぽかに。デザートのソフトクリームまで、しっかりいただきました。

Cap/『ものほんソフト(390円)』は、オホーツクあばしり牛乳を使った、お店自慢のソフトクリーム。あっさりした後味で、食後にぴったり。

1日の終わりに

バードウォッチングと言えば夏や冬というイメージを持っていましたが、秋にもまた違った楽しみがありました。今回出会ったのは、過酷な旅の途中にいる渡り鳥たち。夏のような鮮やかさや冬のような雄大さはなくとも、彼らの旅路や飛行距離を想像してみると、心が惹きつけられます。加えて湖という観察しやすい場所で鳥たちを眺めたおかげで、鳥の習性や群れでの動き方など新たな発見がたくさんあり、彼らへの興味が一段と深まりました。渡りの途中だったあの鳥たちは、今頃どこにいるのでしょう。無事に目的地へと辿り着いたでしょうか。そんなことを考えてしまいます。

春夏秋冬、季節ごとに異なる楽しみ方ができるバードウォッチング。さっそくまた次回の計画を立てたいと思います。

スロウ日和編集部

小清水町では定期的に野鳥ガイド講習会も開催。バードウォッチングをさらに楽しみたい初心者の方にもぴったりの講習会です!詳しくはHPで最新情報をご確認ください。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。