
稚内の住宅街に佇む、ウィスカコーヒー。2024年2月にオープンした、珈琲と焼き菓子、そして本が楽しめる店です。扉を開けると、ウィリアム・モリスの壁紙やアーコールチェアに囲まれた、こぢんまりと心落ち着く空間が広がります。本棚には店主・森玲奈さんが集めたお気に入りの本が並び、訪れた人は自由に手に取って読むことができます。おいしい珈琲や焼き菓子を味わいながら、本と過ごすひととき。こんなお店が近くにあったら、ひと息つきに、お気に入りの本を読みに、きっと何度も通ってしまうでしょう。(取材時期 2025年7月)
Shop Data
ウィスカコーヒー
住所 稚内市栄5丁目3-6
電話番号 0162-33-4112
開館時間 12:00~18:00(L.O.17:30)
定休日 日・月・火曜、不定休あり
Instagram @uisce_coffee
※営業日の詳細はInstagramから確認を。

本好きの店主が開いた、珈琲と焼き菓子、そして本の店。
ここは北の果てのまち、稚内。その住宅街の一角にあるのが、カフェ・ウィスカコーヒー。扉の奥には、こぢんまりと愛らしい空間が待っていた。ウィリアム・モリスの壁紙、アーコールチェア、壁に備え付けられた本棚。本棚の中には、店主の森玲奈さんが集めてきた本がぎっしりと並んでいて、カフェを訪れた人はそれらの本を自由に読むことができる。

おいしい珈琲片手に、ゆっくりと読書を楽しむ時間。それは決して特別ではないけれど、仕事や家事に忙しい日々の中で、そうした時間をつくるのは案外難しい。そんなとき、こんな空間が近所にあったなら、どんなに心満たされることだろう。
店主の森さんは、大の本好き。そして、カフェ好きでもある。札幌で暮らしていた頃にいろいろなカフェを巡り、「いつか地元の稚内で、地元の人たちにゆっくりと過ごしてもらえる場所をつくりたい」という思いを温めていたそう。

その後、稚内に戻り、自宅の一角を改装してカフェを開いたのは2024年2月のこと。「昔から集めてきた本が、ものすごくたくさんあって。自宅がちょっとした図書室のようになっていたんです。この本を活かして、お客さんに喜んでもらえたらなと」。そんな思いから、「本のあるカフェ」というスタイルで店を営み始めた。
過ごし方は人それぞれ。ゆっくりと、気の向くままに。
店内に本はたくさんあるものの、ここを訪れる人たちの目的は人それぞれだ。ほっとひと息つくため、気の置けない友人とお喋りを楽しむため、おいしい珈琲と焼き菓子を求めて。「本を読んでもらえるのも、純粋にお茶を楽しんでもらえるのも、どっちもうれしいです。ゆっくりと寛いでもらえる空間にできたらいいなというのが一番にあったので」と、森さんは言う。
開店当初、ドリンクは珈琲メインだった。来てくれる人が増えていくにつれて「いろいろと選べたほうがいいな」と、紅茶やハーブティーのラインアップも豊富に。同じ理由で、焼き菓子も定番のスコーンやプリンに加えて、バスクチーズケーキや季節のケーキが仲間入り。すべてイギリスの焼き菓子をベースに、森さんが手づくりしている。


写真右が『キャラメルバスクチーズケーキ』、左は定番の『ウィスカプリン』。いずれも北海道の素材を中心に使った、素朴で優しい味わい。珈琲との相性も抜群。メニューは季節・曜日によって変動あり。
ドリンクもスイーツも、「喜んでくれる人がいるから」と、自然にメニューが広がっていく。その過程に、森さんの人柄がよく表れているように思う。
メニューはもちろん、本を楽しみに来る人への心配りも忘れない。本棚をよく見ると、数冊栞が挟んである本がある。ウィスカコーヒーには、名前と読書メモを書き込めるオリジナル栞があり、読みかけの本に挟んでおくことができるのだ。


一冊読み終えることができなくても、また続きを読みに来ることができる。そこに森さんの「また、ゆっくりどうぞ」というメッセージが添えられているような気がして、心がほっと温まる。
おいしい珈琲と焼き菓子、〝良かったら〟その傍らに本を一冊。そんな控えめで、優しさにあふれる店主のスタンスが、いつまでもここで寛いでいたくなる理由だ。

個人的に一番大好きな小説を見つけて、ひっそりうれしくなりました。また稚内に行くときは、ゆっくり本を読みに行きたいなと想像を巡らせています。