訪れる人々の心を惹きつけてやまない、美瑛町の風景。代表的な観光スポットをめぐるのも良いですが、時にはゆったりとした美瑛時間を満喫してみませんか?2020年4月に発行したチビスロウ美瑛の中から、のんびりと過ごせるカフェと宿情報を紹介します。
スプウン谷のザワザワ村
幼い頃に絵本で見たような、三角屋根に煙突の付いた家。それが今夜の宿だと知ったとき、誰もが胸を躍らせることだろう。遠目に見ても可愛い、三角屋根の集合体。一帯は「スプウン谷のザワザワ村」と名づけられている。「初めてここへ来て少し窪んだ地形を見たとき、奥さんがスプーンみたいだって言ったんです。側では麦の穂がザワザワと揺れていて」と、素敵な由来を話してくれたのは、オーナーの小田栄治さんだ。
建物に限らず、コテージの中の飾り棚やテーブル、イスまで小田さんのお手製。とことん手づくりにこだわるのは、それが大阪から移り住んできた小田さんの憧れる「北海道暮らし」だったから。「美瑛の風景に惹かれて移住したので、その風景を作る農業者になることに強い憧れがありました」と、2012年からは農業も兼業。2018年には農場の中にカフェをオープンした。
小田さんが移住してから、長い時間をかけて築き上げた特別なひと時が、訪れる人のお腹と心を隅々まで満たしている。
Shop Data
スプウン谷のザワザワ村
住所 美瑛町大村大久保協生
電話番号 0166-92-7037
URL http://www.spoonvalley.com
宿泊料金 1泊朝食付き 17,000円〜(+3,900円で夕食付き)
棟数 5棟
atelier nipek café&gallery【アトリエ ニペク】
美瑛町で家族と共に暮らしながら、世界で活躍する写真家・中西敏貴さん。中西さんが、妻の純子さんと共に営むatelier nipekは、中西さんによる作品としての写真を純粋に楽しめるカフェ&ギャラリーだ。建物がある場所は、知り合いの農家から紹介してもらったというカラマツ林の中の土地。秋の晴れた日には、辺り一面、カラマツの橙色に包まれ、十勝岳連峰の姿も一望できる。
「山の噴火があって、美瑛の丘ができた。だから、美瑛の風景と十勝岳連峰の存在は切っても切り離せない。美瑛在住の写真家として、これからもっと、十勝岳のほうへ視野を広げていきたい」とは、中西さん。おいしいコーヒー片手に、中西さんの作品をゆっくりと楽しめば、また新たな美瑛の魅力に気づくだろう。
Shop Data
atelier nipek café&gallery
住所 美瑛町美沢希望
電話番号 0166-74-8169
営業時間 10:00〜14:00
営業日 月・水・金曜
URL https://www.nipek.net
ries café【リーズカフェ】
観光地から少し離れた五稜という地区に、このカフェができたのは2002年のこと。その頃から「ずっとここにあったみたいと言われる」という店内は、オーナーの川上敦さんがセルフビルドで作り上げた。「長靴のまま農家さんが出入りできるよう」、土足OKに。地元客に愛されるのも納得のこだわりが垣間見える。
夏は庭で採れた野菜をふんだんに取り入れる。書き入れ時だからと無理して働くことはせず、自然に合わせたリズムで、できる限りのもてなしを心がけてきた。そんな夫妻を訪ねて、本州から訪れる常連客も少なくないそうだ。心が弱っていた人が、この店に通い元気を取り戻していく姿を「何度も見てきた」と妻の里枝さんは穏やかに言う。
今では老舗と言われることも増えたというリーズカフェ。だからといって気負うこともなく、「17年ってあっという間ね」と2人で笑い合う。これからもこんな調子で、多くの人々を笑顔にしていくのだろう。
Shop Data
ries café
住所 美瑛町五稜第1
電話番号 0166-68-7821
営業時間 12:00〜18:00
定休日 木・金曜(5~10月)、火〜金曜(11~4月)
URL https://www.bonzu.jp/RC-HP
VILLA e PIZZERIA iL coVo【ヴィッラ エ ピッツェリアイルコーヴォ】
旅に期待する特別感に、さりげなく応えてくれる一日1組限定のコテージ、イルコーヴォ。古材を大胆に活用した内装に、景色を楽しむことを主軸に据えた大きな窓。座り心地抜群のソファに腰かけて、町内の写真家の写真集をのんびり眺めるのもいいだろう。
予約すると味わえる夕食の焼きたてナポリピッツァには、美瑛町産小麦と道産食材がたっぷり使われている。滞在中に一度提供される朝食のサンドイッチはオリジナルのトートバッグ入りで、そのまま外出できる。
こんなに至れり尽くせりなのに押しつけがましさを感じないのは、「距離感を大切にしたい」というオーナーの武部輝久さんのポリシーがあってのこと。イルコーヴォは「隠れ家」の名前にふさわしい、大人の寛ぎを追求した空間だ。
Shop Data
VILLA e PIZZERIA iL coVo
住所 美瑛町大村村山
電話番号 0166-92-5489
宿泊料金 宿泊料金1泊1名20,000円(2名利用時)※2泊目以降1名10,000円
室数 1棟1室(定員3名)
URL http://www.ilcovo.jp
tomte rum 【トムテルム】
美瑛の緩やかな丘に佇む、赤い壁の木造の建物。玄関には看板犬のピッピが、まるで家族が帰って来たかのように尻尾を振って出迎えてくれる。ダイニングには、薪ストーブに絵本。北欧の雑貨や、アンティークの食器が醸し出す、ゆったりとした雰囲気が心地良い。「ここは、何もしないことをしにくる宿です」と話してくれたのは、オーナーの太田夫妻。
かつて都会で暮らしたこともある2人。だからこそ、宿に来る人が求めているもの、美瑛に来て開放される心に寄り添える。一度泊まりに来た人の多くがリピーターになるというのも納得だ。
ひと晩を過ごし朝食を食べた後、ぼんやり窓の外の景色に目を向ける。木漏れ日が部屋の壁に当たって、ゆらゆら揺れている。そんな何げない景色に心を動かされている自分に気がつく。この宿で過ごした時間が、いつの間にか鈍っていた感受性を呼び覚ましてくれた。
Shop Data
tomte rum
住所 美瑛町大村大久保協生
電話番号 0166-92-5567
宿泊料金 1泊2食付き 9,900円+税〜
室数 5室(洋室トリプル2、ツイン2、和室1)
URL http://www.tomterum.com
丘のほとり
美瑛らしさを360度味わえる、新栄の丘が散歩圏内のこの宿は、まさに名前の通り「丘のほとり」。現在別の場所でも宿を営むオーナーの森部富士樹さんが「丘の景色をより一層楽しめて、贅沢な時間が過ごせる宿を」との思いでオープンさせた。
ここの特徴は、すべてが「丘の景色ありき」なこと。客室には丘を見渡せる大きな窓がたくさん。お風呂にも窓が付いていて、ただ景色を見てぼーっとするだけでも特別な時間へと変わる。森部さんは、「時間の流れと共に、刻々と空の色が変わるんです。ピンクや橙、日が沈んだ後には群青色に。その美しさを感じてほしい」と語る。
夕食は、美瑛の野菜のおいしさと道産ワインに合う味を柱にしたコース料理。食材は美瑛産、道内産にこだわって。パンやアイスクリームに至るまでオーナー夫妻の手作りだ。帰る頃には、ずっとここにいたいと思ってしまうほど、のんびりとした時間が流れていた。
Shop Data
丘のほとり
住所 美瑛町美馬牛新栄
電話番号 0166-92-5360
宿泊料金 1泊2食付き 17,000円(2名利用時)
室数 4室
URL http://okanohotori.com