安田侃氏が創る「からだ」と「こころ」で感じるアート。〈安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄〉

アルテピアッツァ美唄は公園であり、大きな彫刻の美術館でもあります。美唄市出身でイタリアを拠点に世界で活躍する彫刻家、安田侃(かん)氏の作品が40点以上展示されています。あえて作品名は掲示せず、見る人の発想や感情を引き出すことが目的。静かに語りかけてくる彫刻のもとで、自分自身の心と向き合ってみませんか。

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安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
住所 美唄市落合町栄町
電話番号 0126-63-3137
開館時間 9:00〜17:00
休館日 火曜、祝日の翌日(日曜除く)、12月31日〜1月3日

入館料 無料
※ギャラリー・アートスペース内に設置された募金箱への寄付金は運営費に充てられます。

過去に思いを馳せ、今を見つめる

気持ちをリセットしたいとき。何も考えず、ただ自然の中に身を置きたいとき。ふと公園に足を向ける。子どもの頃、毎日のように通っていた公園は、大人になった今でも気負わず立ち入れる場所だ。

公園にはいつも人がいる。犬の散歩をする人、ベンチでおしゃべりをする人、走り回って遊ぶ子どもたち…。時には悪さをするような若者もいるけれど、それもひっくるめて、趣味も性格も国籍もバラバラの不特定多数が集まる「公園」は、つくづく憩いの場なのだなと感じる。

札幌から約1時間で到着する美唄市。山々に囲まれた緑豊かなこの町には、アルテピアッツァ美唄という大きな彫刻公園がある。公園といっても、ここは美術館。「アルテピアッツァ」はイタリア語で芸術広場という意味で、敷地内には美唄出身の彫刻家、安田侃(かん)氏の作品が40点以上展示されている。現在もイタリアを拠点に世界で活躍する安田氏の巨大な彫刻作品は、札幌の駅ビル構内や直島、イタリアの観光地などで目にしたことのある人も多いだろう。

安田氏が考える彫刻とは

安田氏が美唄市と共に手がけたアルテピアッツァ美唄は、1992 年に誕生した。今も安田氏本人が年に数度は訪れ、施設の状況を確認したり、働いているスタッフと意見を交わす。アルテピアッツァ美唄はいわば、安田侃の思いが息づく彫刻の聖地。若いアーティストや作品のファンが世界各地から訪れ、作品の生まれ故郷を肌で感じているのだ。

作品は大きく3ヵ所に分けて展示されている。屋外全体と、旧栄小学校の校舎を利用したギャラリー、体育館を利用したアートスペースだ。屋外とアートスペースには見上げるどに大きな作品が、ギャラリーには小作品が、それぞれ点在している。

「作品名は掲示していません。安田さんは彫刻を心の鏡と位置づけています。自分の今が映る鏡です。見る人のそのときの気分によって見え方、捉え方が変わってくるものなのだ話しています」とは、スタッフの影山宏明さん。見たままの発想や、感じたままの感情を引き出すのが安田作品。毎月2日間開かれる彫刻教室「こころを彫る授業」では、実際に大理石を彫ったり削ったりして、時間をかけて自分の作品を形にしていくことができる。安田氏の帰国中、この授業の講師を務める際には全国から生徒が駆けつけるそうだ。

異色なオーラを放って人を寄せ付けないアート作品とは違い、安田氏の彫刻作品は、なぜだか側に寄りたくなる、触りたくなる。

だからだろう、この公園であっても、別の場所であっても、安田作品の周りには人が集まってくる。作品はごく自然な形で存在し、そして静かに語りかけてくる。「今、何を感じているか」と。

順路がないので好きなように周り、好きなだけいられる。より深く作品を知るならガイドツアーに参加してみては(毎週土曜10:00〜、約30分、無料。2021年は4月24日(土)から11月6日(土)開催)。
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スロウな旅北海道 vol.4 西エリア

北海道で暮らす私たちが思う「心豊かになれる旅」を提案。西北海道エリアを対象にした3泊4日のドライブルートやツアーの情報。パン屋や温泉、宿など旅の目的地として魅力的なスポットを紹介します。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。