その一杯に、一粒の豆の個性を感じて 〈CAFE TRUNK〉

対面式のカウンター。横山さんはお客さんと会話しながら、サイフォンを使って珈琲を入れます。あえてハンドピックをせずに、いいところも悪いところも含めての味わいを提供するスタイル。それぞれの豆の個性を感じられる一杯を、北海道の東端・別海町で楽しめます。

Shop Data

CAFE TRUNK
住所 別海町別海旭町94
電話番号 0153-74-8133
営業時間 11:00~17:00(パンケーキがなくなり次第終了)
定休日 木曜

珈琲好きな青年は好奇心いっぱい

とにかく珈琲が好き。別海町でカフェトランクを営む横山直也さんにとって、店を始める理由はそれだけで十分だった。10代の頃からミルで豆を挽いて珈琲を淹れていた横山さんは、ずっと温めてきた夢の実現に向けて歩み出す。

「おいしい珈琲の基準がわからなかったから、とにかく自分で焼いてみようと思って」。札幌で自家焙煎を行っている店舗などで焙煎を教わり、2013年にトランクをオープンさせた。横山さんがひと口味わって「これは!」と感動したグァテマラをベースにした『トランク』。別海牛乳との相性も抜群なマンデリンベースの『ベッカイ』。その他にも、オリジナルブレンドの豆などがカウンターに並ぶ。「店長イチオシ」のポップが貼られているのは、パプワニューギニア・シグリ。横山さんはその味わいを、「特別にきれい」と表現する。コク、甘み、香りのバランスが絶妙で、開店時からずっと仕入れている豆なのだそうだ。

サイフォンを使ってじっくり淹れる

対面式のカウンターに設置されたサイフォンで、目の前で淹れる様子を見られるというのも、珈琲好きの好奇心をくすぐるポイント。「カウンター越しにお客さんと会話しながら」というのが、開店頭初から目指したスタイルだ。横山さんいわく、湯の量や抽出時間が一定のサイフォンで淹れると「味のバラつきが少なく、酸味を抑えて甘みを出せる」のだとか。さらには、「焙煎の出来不出来がわかりやすい」とも教えてくれた。

店をやるにあたって、横山さんがどうしても導入したかったものがある。ダッチ珈琲(水出し珈琲)だ。トランクの『水出しアイス珈琲』は、ロブスタという種類の豆専用に改良された器具を使い、12時間かけてもどかしいほどにゆっくりと、一滴ずつじっくり抽出している。札幌での修業時代、横山さんが「衝撃を受けた」という味わい。そもそもロブスタは強い苦味があり、ホットでは飲むことができない。水出しにすることで、初めておいしくいただくことができるという代物。トランクではさらに甘みや香りを引き出すブレンドにして提供している。

こうした珈琲への飽くなき情熱に呼応するように、毎日通う常連客も少なくない。「帰り際、『おいしかったよ』と声をかけてもらえるのが、本当にうれしくて」。この仕事が好きなのだと、全身で表現する横山さんを見ていると、こちらまで幸せな気持ちになってくる。

豆も人間と同じ。それが個性と味わいにつながる

何よりも横山さんならではの哲学を感じられるのが、生豆に対する向き合い方だろう。鮮度を大切にしたいからと、生豆の仕入れは、1~2キロの少量単位で。仕入れた生豆に関して、横山さんはあえてハンドピックをほとんどしないのだという。「いいところばかりの豆もないし、悪いところばかりの豆もない。人間だってそうですよね。それが個性だったり、味わいだったりする」。

思わず、ハッとした。その言葉には横山さんの人生観が詰まっている。一般的には「雑味」とマイナスの要素に解釈されるものも個性と受け止めることで、豆それぞれの「性格」を、より鮮やかに感じられるようになる。その日、その時にしか味わえない一杯との出逢いが、ますますかけがえのないものになるような。トランクは、そんなワクワクとした予感をくれる場所だ。

この記事の掲載号

北の焙煎人

北海道における珈琲の歴史、焙煎と気候の意外な関係、そして珈琲に魅せられた人々の熱い思い。自家焙煎珈琲の店も多数掲載。

この記事を書いた人

家入明日美

家入明日美

火の国・熊本出身。野生動物の勉強がしたくて北海道へ移住し、自然のことを伝えたくてスロウ編集部に入る。馬とナキウサギ、やんちゃな飼い猫と怒髪天が心のオアシス。