辿り着いたのは林業。森をフィールドに生きる、働く。

9月某日、青々とした森の中でチェーンソーの鳴る音が響き渡る。駆動音とともに激しく舞う木くず。丸太を切り終わり、ヘルメットを脱ぐと人懐こい笑顔が表れた。

福家菜緒さんは、徳島生まれの高知育ち。幼少期に登山好きの母親に連れられ、山や森で自然と触れ合ってきた。木に魅せられたのは、この頃から。高校生の時には、すでに森で働く未来を描いていたという。

高校卒業後は、鳥取大学地域環境学科に進学。森林の生態をより深く学ぶため、北海道大学大学院の環境資源学専攻に進んだ。札幌近郊で、国立公園のアクティブレンジャーなどを経験した後、2013年に女の子を出産。憧れの林業にチャレンジしたい気持ちは変わらずったが、早朝出勤が基本のため、子育てとの両立は難しいと感じていた。そんな中、福家さんはSNSで池田町の地域おこし協力隊の募集を発見する。「池田町が推進している自伐型林業なら、個人の裁量で働くことができます。これなら子どもを育てながら林業ができると感じました。」池田町での暮らしは、今年で3年目。小学生の娘を育てながら一緒に野鳥を観察したり、森を散策したり、池田町の自然を満喫している。

現在は、林業だけでなく環境教育プログラムにも力を入れている。地元企業や学校関係者との協力体制のもと、子どもたちを森に招いて自然について学んでもらう取り組みだ。活動を続ける中で、福家さんとの出会いをきっかけに、林業の道へ進んだ女子生徒がいた。「池田高等学校で講演を行ったところ、ある女子生徒さんが私の姿を見て、女の人も林業で働いていいんだと思ってくれたんです」。林業は、いまだ男社会のイメージが強い職業だが、福家さんの存在がその認識を大きく変えてくれたという。

池田町の子どもたちに、未来の森づくりの担い手となってもらいたいという福家さんの思い。2023年夏には林業と環境教育と森林空間活用を展開する事業「WALDIKEDA」を立ち上げる予定だ。「次の目標は女性が働きやすい林業環境を創り、次の世代に託す森を育てること」と、目を輝かせた。

福家さんの行う環境教育プログラムは、池田町立池田小学校の授業にも組み込まれている。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。