小規模で森を育てて管理する、自伐型林業の広がり 〈minotake forest works〉

近年、移住後の職業の選択肢として自伐(じばつ)型林業が各地で広がっています。山林が町面積の6割を占める池田町もその一つ。残したい木を決めて、成長の支障となる木を間引くことを「間伐(かんばつ)」といいます。自伐型林業は大型重機を使用せず投資を極力抑え、少しずつ間伐を繰り返すことにより継続的に収益を確保します。長期的な間伐により木を育成する取り組みは、自然を守ることにも繋がるため、環境意識の高い若者世代にも注目されている林業のあり方です。

川瀬千尋さんが池田町に移住したのも自伐型林業がきっかけ。不動産会社で働いていた川瀬さんですが、きのこや山菜が好きなこともあって、以前から林業に関心がありました。池田町の地域おこし協力隊で林業を学びながら、同じ協力隊の頓所幹成さんらと2021年、森づくり任意団体としてminotake forest worksを設立。自分たちの手の届く範囲で自然環境を守りながら、経済的にも成り立つ自伐型林業を実践しています。具体的な活動内容は山林の委託管理や作業道敷設、森林環境調査、庭木伐採・剪定などの実務から、森林環境教育としてイベントやワークショップを企画することも。「子どもたちに未来の森づくりについて考えてほしい」と活動の幅を広げています。

自伐型林業は環境保全の点でも注目されていますが、働く人たちにとっても良い面があります。それは一般的な林業と比べ、自分のペースで働くことができるためワークライフバランスを保ちやすいこと。家族との時間を増やしたり、兼業で仕事の幅を広げたりすることもでき、実際川瀬さんは不動産業を、頓所さんは狩猟と革製品等の加工を副業にしています。林業にがんじがらめになることなく、自身のライフスタイルを築くことができるのも魅力の1つです。

minotakeの活動の輪は、林業だけにとどまりません。間伐材や山菜などの林産物を活用した異業種とのコラボレーションは多様な広がりを見せています。薪や家具だけでなく、地元飲食店と協力して作った樹液コーヒーや池田町の特産品であるワインを飲み比べするためのプレートなど、さまざまものが生み出され、今後もいくつか計画が。森でつながる他業種との連携は今後もっと広げていきたいと川瀬さんは話してくれました。

minotake forest worksが掲げる、経済性と環境性が両立した森づくり。種類、太さ、高さなど、さまざまな木を育む多様性に富んだ森は、環境の変化に強く、経済性も兼ね備えています。「どの木を伐って、どの木を育てるのか。間伐を繰り返し、デザインするように森をつくるのが自伐型林業の醍醐味。100年、200年先を見据えて、残す木を見極めるのは難しくも面白いです」と、川瀬さんと頓所さんは誇らしげにやりがいを語ってくれました。

川瀬さんと頓所さんが、町内で伐採したチェンソー製材を使用し製作したカウンター。十勝芽室町の「cafe BLANCO」で使用されています。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。