2度目の再生を果たした、山奥の秘湯〈然別峡 かんの温泉〉

道東エリアに数多く存在する秘湯。ハンドルを握る手に汗が滲むような山道を根気強く進んだ先に待っている、極上の癒やし。大雪山国立公園内に位置するかんの温泉も、そんな秘湯のひとつ。ここでは携帯電話は圏外。惰性でスマートフォンの画面を眺めていた時間が、ゆったりと湯に浸かる時間に変わり、着信音は鳥の声や木々のざわめき、川のせせらぎに変わるのです。

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然別峡 かんの温泉
住所 鹿追町字然別国有林145林班
電話番号 050-5319-4068(予約)、050-5319-6223(お問い合わせ)

営業時間 12:00〜17:00(最終18:00)
日帰り入浴 大人650円、中学生300円、小学生200円、幼児無料
宿泊料金 1泊2食付9,330円~/人
定休日 4月~11月/火曜、12月~3月/火・水曜
URL http://www.kanno-onsen.com

全国各地から温泉マニアが足を運ぶ

開湯から100年以上の歴史を持ちながら、2008年に一度は休館したかんの温泉。惜しまれながら歴史に幕を下ろしたこの場所が、奇跡の復活を遂げたのは2014年のことだった。町内の企業、鹿追ホットスプリングスが名乗りを上げ、やっとのことでリニューアルオープン。かつての佇まいを要所に残しながらも、設備を大幅に改修し、足腰の悪い客に配慮して宿泊棟はすべて洋室に一新された。

ところが、再開からわずか2年あまりの2016年8月。台風10号が襲い、全館浸水。崩れた土砂によって浴場の壁の多くが押し破られ、再び9ヵ月に及ぶ休館を余儀なくされた。現在は一部の源泉を除きほとんどが復旧しているものの、周囲の風景は激変してしまった。

しかし、客足が途絶えることはない。貸し切り露天を含め全11 種ある浴槽に注がれる湯は加温・加水・循環なしの源泉掛け流し。10ヵ所以上ある源泉それぞれに湧き出す湯の成分が異なるため、浴槽ごとに入り比べてみるのも楽しみのひとつだ。泉質の良さは2度の休館を経ても往時のままで、全国各地から足を運ぶ温泉マニアの高い期待に見事に応え続けている。

この湯を求めてやまない人が、日本全国にどれほど多く存在していることか。度重なる災難からの劇的な再開こそが、その答えを何より明らかに示している。

(取材時期 2018年4月1日)

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スロウな旅北海道⑦

北海道で暮らす私たちが思う「心豊かになれる旅」を提案。東北海道エリアを対象にした3泊4日のドライブルートやツアーの情報。パン屋や温泉、宿など旅の目的地として魅力的なスポットを紹介します。

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スロウ日和編集部

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