
札幌で美容師として働いていた松井千代さん。結婚を機に豊頃町へ移住し、2015年に町の補助金を活用して美容室をオープンしました。自分で店を営むことで地域に馴染み、まちの人々との関係性がより深まったと言います。(内容は2025年4月現在の情報です)
地域の人たちと一緒に年をとっていけるお店に。
松井さんは岩手出身で、18歳のときに札幌の学校に進学、そのまま北海道に留まり、札幌の美容室に就職しました。美容室で見習いとして働きながら通信教育の学校に通い、美容師の免許を取得します。スタイリストとして出席した当時の勤務先のお客さんの結婚式での出会いがきっかけで大津出身の旦那さんと結婚。 これを機に2010年に大津に移住することとなりました。
札幌では仕事が忙しい日々を送っていたことや、生まれ育った岩手ものんびりとした土地柄だったこともあり、豊頃での暮らしに抵抗は無かったといいます。豊頃に来てからは美容師の腕を振るうこともなく、頼まれたときに近所の子どもたちのカットをしていた程度でした。そのうちに技術を忘れていくのがもったいないと思ったこと、町内で高齢のため閉業した美容室があったことなどさまざまな要因が重なり、ほどなく自分のお店を開くことを決意しました。
2015年に「美容室オルタナ」をオープン。上は90代から下は小さなお子さんまで、幅広い年代のお客さんが訪れます。十勝の鹿追町に住んでいるという札幌時代の友人とも思いがけない再会を果たし、せっかくだからと約1時間半かけて美容室に通ってくれているのだとか! 十勝では町と町との距離はあるけれど、ドライブがてら行き来するのも楽しいそうです。

開業にあたっては商工会に相談し、豊頃町から新規起業支援の補助金を活用しました。こちらの補助金は5年間事業が継続されていれば返済をする必要が無くなるというものだったのも開業を後押しするきっかけになったといいます。この地でお店を構えることで地域に馴染み、人と繋がりが生まれ、豊頃のことも知ることができました。お客様との関係性も、札幌で働いているときはあくまでも「美容師とお客さん」だけの関係でしたが、今では同じ町民同士として、それ以上に密接につながることができていると感じるそう。髪を整えるという生活の楽しみを提供することはもちろん、定期的に来店していただくことで、季節の変化を感じ、1年1年共に過ごし、より深い信頼関係を築けているといいます。
札幌での勤務先は大きなお店でスタッフの人数も多く、何でも揃っていたそうです。それでも「今は一人ですべてをしなくてはならない大変さはありますが、ストレスも無く、お店を開いたことはメリットしかありません。当初は“ただ来ただけ”だったこの町も、さまざまな人たちとのつながりによっていつの間にか“好き”になっていました。今は美容師として、理想的な働き方ができていると思います」と笑顔で話してくれました。
豊頃町の基本情報や、地域で心豊かに暮らしている人々の物語は、特集「とよころよいところ」からご覧いただけます。
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