芽室の人と、風景と。五感で楽しむサイクリングツアー、めむろ散走。

多くのサイクリストから愛される、十勝のまっすぐな道と長閑な風景。ただ移動を目的にするだけではなく、地域の人たちと交流したり、寄り道したりしながら、芽室を楽しみたい人におすすめなのが「めむろ散走」。自転車に乗りながら、芽室の食・農村風景・人との出会いを楽しむサイクリングツアーです。今回は、2018年頃からめむろ散走のコンテンツ化に携わり、現在も自らガイドを務める及川雅敦(まさのぶ)さんに、ツアーづくりの経緯とその魅力についてお話を聞きました。※写真提供(ツアーの様子すべて)/及川さん(取材時期 2024年3月)

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一般社団法人十勝プラス
住所 芽室町西1条2丁目13-1
電話番号 090-9337-4073
URL
http://tokachiplus.com/wp
Instagram @memurocycletourism

散歩するように芽室を走る、「めむろ散走」のこと。

畑と山、空が織り成す長閑な風景と、そこでいきいきと暮らす人々の日常。そんな〝芽室らしさ〟を五感で味わえるのが、「めむろ散走」です。

「散走」とは、自転車でゆっくりと散歩するように地域を巡り、歴史や文化、食などその土地の魅力に触れる楽しみ方を表す言葉です。芽室町でも、2017年に芽室町サイクルツーリズム協議会を設立し、地域ならではのプログラムとしてサイクリングを通した魅力発信に取り組んできました。

及川雅敦さん。埼玉県出身で、バックパッカーとして国内外を旅した経験も。めむろ散走のツアーでは、自らガイドも務めます。

協議会の設立から約1年後に芽室町の地域おこし協力隊に着任し、めむろ散走のコンテンツ化に取り組んできたのが、及川雅敦(まさのぶ)さん。どんなルートなら、芽室らしさが伝わるのか。どんなことをしたら、参加してくれた人に楽しんでもらえるのか。地域の人たちと協力しながら、事業の舵をとり、具体的なコンテンツ化などを進めてきました。

目の前の風景に、地元の人の思いや文化を〝プラス〟する。

サイクリングを仕事の軸にしてしまうほどですから、及川さん自身、根っからの自転車好きなのだろうと思い尋ねてみると意外な答が。「実はそういうわけではなくて。自転車はあくまで普通に乗れる程度だったんです。ただ協力隊の募集に『自転車に乗れなくてもOK』と書いてあって、思い切りがあって面白そうだと感じたのと、あまり経験値がないからこそできることもあるんじゃないかと思い、応募を決めました」。

縁があったわけではない十勝という場所で、未経験の分野に取り組むことになった及川さん。めむろ散走の事業を進めていく上で、どんなことを大切にしてきたのでしょう。

「協力隊として芽室に来て、芽室の人たちと関わっていく中で、芽室の魅力は『やっぱり人』なんじゃないかと。たとえば、基幹産業である農業に携わる人たちも皆さん人間味にあふれているというか、とても良いキャラクターなんです。畑の風景の美しさに触れながら、生産者の皆さんにも会ってほしい。ちゃんと人の顔が見えて、五感で芽室の魅力が楽しめるプログラムをつくっていきたいと思うようになりました」。あの人もあの人も面白くて協力的で…と話す及川さんの表情には温かさが浮かびます。

高野農場の高野竜二さん(写真右)と打合せ。高野さん自身もガイドを務めたりと、共にコンテンツづくりに取り組んできました(現在は受け入れ先として協力)。

人の顔が見えて、五感で芽室の魅力が楽しめるプログラム。たとえば、酪農家のもとを訪れて牛舎を案内してもらったり、畑にお邪魔して農家の思いに耳を傾けながら野菜を収穫したり。周囲の人の協力を得ながら、及川さん自身も楽しいと感じることを忘れずに、芽室らしいプログラムのあり方を探って来ました。

「芽室の人たちとは、気持ちの〝ベクトル〟が合っている感じがします。同じ熱量で、同じ方向に向かって進んでいける。受け入れ先として協力してくれる生産者さんたちも、『自分たちの仕事を知ってもらえる機会ができてうれしい』と話してくれるんです」。

プログラムの参加者にとっても、生産者の声を直接聞けるのはなかなかない機会。十勝を支える農業・酪農が具体的にどのように営まれているのか。生産者一人ひとりの思いの上に、パッチワークの風景が織り成されていること。そうした背景に触れたとき、目の前に広がる風景の美しさに「地元の人の思いや文化」がプラスされて伝わっていくのでしょう。

ちなみに、一回のツアーにおける走行距離は20km程度(ツアーによって異なります)。「自転車を漕ぐだけで疲れ過ぎてしまわないように」電動自転車を導入したり、「初めて出会う参加者どうしがコミュニケーションをとりやすいように」食事の時間を工夫したりと、本格的なサイクリングは初心者で、旅好きな自身の感覚や経験もツアーづくりに活かされているようです。

十勝らしいスケールの大きさを活かして、これからも。

2024年現在は一般社団法人十勝プラスの代表として、芽室のサイクルツーリズムに携わっている及川さん。「たとえば芽室町の特産品スイートコーン一つとっても、おいしさ、生産者の思い、加工品についてなど、いろんな角度で掘り下げられると思うし、芽室には一次産業のほかにも面白い取り組みをしている人がたくさんいる。日高山脈にちなんだプログラムもできたら良いですよね」と、頭の中はたくさんのアイデアであふれている様子です。

改めて、「芽室町でのサイクリングすることの良さ」を尋ねてみました。「『人』はもちろんですが、『風景』そのものも魅力的ですよね。特に普段走っているような畑地帯だと目に見える範囲内に人工物がほとんどなく、そうした風景を〝ひとりじめ〟できる可能性がすごく高いんです。それはやはり、十勝らしいスケールの大きさがあってこそだと思います」。

どこまでも広がる風景の中、自分の足でペダルを漕いで進む爽快感と風に包まれる心地良さ。ガイドとの交流を通して、農業や酪農など十勝を支える人々の思いに考えを巡らせる時間。それらは車で通り過ぎるだけではなかなか触れらないもの。時にはたっぷり時間をとって、「散走」ならではの時間の流れを感じてみてはいかがでしょう。

これから訪れるグリーンシーズンに向けて、十勝プラスで開催しているツアープログラムを2つピックアップして紹介します。各ツアーの詳細や、ほかのツアープログラムなどの詳細は、Webサイトからチェックしてみてくださいね。スノーシーズンもファットバイクツアーなどが楽しめます。

新嵐山周辺さくっと散走サイクリング

芽室町を代表する観光地・新嵐山スカイパーク周辺の、走って楽しいコースと写真映えするスポットを巡る「いいとこ取り」ツアーです。展望台からは、どこまでも広がる十勝平野のパッチワークの景色を一望できます。オプション(+4,000円)で、地元素材にこだわったパン屋さんやソフトクリーム屋さんに立ち寄ることも可能です。詳細はコチラから。

めむろモーモー散走サイクリング

実際の酪農家さんに牛舎を案内してもらえるツアー。トラクター試乗体験(運転はできません)、牛へのエサやり体験のほか、牧場の生乳を使用したチーズの試食ができます。子牛がいれば哺乳体験も!詳細はコチラから。

スロウ日和編集部

芽室町での楽しみ方ついては、特集「芽室町でスロウ日和」でも紹介しています。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。