ひげさんが営む、安心感いっぱいの場所〈えほんカフェひっぽ〉

絵本を中心に数百冊の本が並ぶ、えほんカフェひっぽ。店主の中川裕司さん(通称ひげさん)は、元々小学校の教員として働いていた人。根室や石狩の小学校で働いた後、あえて知り合いのいない土地函館へ移住。2017年の春、えほんカフェひっぽを開きました。本棚やカップを置く棚、テーブルなど、店内にある木工品のほとんどがひげさんの手づくり。懐かしさと安心感が漂うカフェで、ほっと寛ぐひとときを。(取材時期 2023年7月)

Shop Data

えほんカフェひっぽ
住所 函館市神山3丁目64-2
電話番号 0138-87-2691
営業時間 11:00~18:00
定休日 火・水曜
URL
https://hakodate-ehoncafe-hippo.com/

教員時代の夢を叶えて。人々を包み込む空間。

壁一面に並んだ絵本や書籍、雑誌、詩集。色とりどりのチョークで書かれたメニュー看板。真摯に相談に乗ってくれる店主夫妻。帰り際に渡される手書きのお便り。この懐かしさ、安心感は何だろう。そんな疑問は店主が30年以上、小学校で教鞭をふるっていたと知れば、合点がいく。

「よく第二の人生って言われるけれど、人生に第一も第二もない。働けるうちは働き、自分の好きなことをやっていきたい」。中川裕司さん(通称ひげさん)は根室や石狩で小学校教諭として勤務し、定年間際に早期退職。次の仕事として選んだのはカフェだった。「子どもたちには『先生、大きくなったら喫茶店のおじさんになるんだよ』と伝えていてね」。長年の夢を叶えたのは、縁もゆかりもない函館。あえて知り合いがいない地域を選び人生の切り替えをはっきりさせたかったという。

メコーヒーやスイーツのほか、『週替わりパスタ』をはじめとする食事メニューも。

店の大きなテーマは絵本。小上がりの横の壁には教師時代に集めた絵本をずらりと並べ、親子で利用しやすいようにした。絵本だけでなく、ひげさんお気に入りの谷川俊太郎の本やサザエさん全巻、暮らしをテーマにした雑誌、小説やビジネス書もある。本好きなら、メニューを選ぶ前にまず本棚に釘づけになるだろう。

増築した本棚やカップを置く棚、子ども用の椅子、テーブルの一部など、店内のあらゆる木工品がひげさんのお手製。庭には専用の作業場があり、時間を見つけてはものづくりに勤しんでいる。木工のほかにも妻が淹れる挽きたてのコーヒー、手づくりのスイーツ、店内に流れるジャズ…。ひっぽにはたくさんの要素があるが、それぞれが喧嘩せずに調和している。中心にひげさんという存在がどっしりと構えているからだろう。「やりたいことをやるのが、人生の正解」。さらりと心に残ることを言ってくれるひげさんは、迷える子羊を導いてくれそうなマスターだ。

猿渡亜美

店内に置いてある本のラインナップにすっかり釘づけに。いつかゆっくり読書を楽しみたいです!

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.75
「風土を描く生地の世界」

テーマは、北海道の「テキスタイル」。織りや紡ぎ、シルクスクリーンや天然染色などを手がける作り手の物語と、北国らしい生地の世界を訪ねて。

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猿渡亜美

剣山がきれいに見える十勝の山奥で、牛と猫とキツネと一緒に育ちました。やると決めたらグングン進んでいくタイプ。明治以降の歴史や伝統に心を揺さぶられ続けています。