斜里岳のふもとで。爽やかな緑の中を巡るサイクリング〈小清水町〉

新緑が眩しい、心地良い季節になりました。北海道の短い夏、この爽やかな緑と空気を味わえるのはほんのひと時。その心地良さを思う存分味わうためにぴったりなのが、サイクリング。今回は小清水のまちを巡りながら、柔らかな緑が美しい畑や堂々とそびえ立つ斜里岳など、豊かで雄大な風景を楽しんできました。爽やかな初夏の風景と、サイクリング体験の様子をお届けします。最後には、初心者でも楽しめる、小清水町観光協会主催のアクティビティの情報も。ぜひ訪れてみてくださいね。※一部写真提供/小清水町 (取材時期 2024年6月)

豊かな緑にあふれたサイクリングへ

サイクリングの出発地点は、アグリハートセンター。2022年にオープンした、小清水農業の振興による持続的な地域づくりを目的とした施設です。農業に関わる実習と研修、特産品の調理加工体験のほか、小清水産の食材を使ったパンとスイーツの製造販売や宿泊室など多くの機能を兼ね備え、町内外問わずさまざま人が利用できます。旅の拠点にも良さそうです。

ガイドは吉田文哉さんから、軽快な走り心地が楽しめるスポーツバイクであるクロスバイクの乗り方のレクチャーを受け、いざ出発。今回は麦乾工場を目指す、片道約10分のショートコースです。電動自転車が用意されているため、初心者でも体力の心配なく楽しめます。

出発して最初に見えてきたのは、広大な畑。じゃがいも、ビート、小麦が並び、さわさわと風に揺れていました。まっすぐにすくすくと伸びた秋まき小麦が淡い緑に色づき、作物ごとに異なる葉の色が、グリーンのきれいなストライプ模様を描きます。その美しさに自転車を漕ぐスピードを緩め、ゆったりと眺めながら走りました。

続いて通るのは、小川が流れる林の中に掛けられた小さな橋。夏に向かって葉を茂らせた木々がつくるトンネルをくぐります。木陰に入った途端、フッと涼やかな空気に包まれ、動いて火照った身体を冷ましてくれました。

最後のカーブを曲がり、立ちはだかるのは長く急な坂。見渡す限り広大な農作地が広がる小清水町ですが、実は丘陵地帯。長いコースだとよりアップダウンが楽しめます。登りは少し大変ですが、下りは爽快です。登りは自信がないという方も心配ご無用。電動自転車のおかげでスイスイと進み、難なく乗り越えることができました。

麦乾工場から眺める、斜里岳と畑を一望する絶景

そうして辿り着いたのは、まちが誇る麦乾工場。昭和61年に完成した以降、栽培技術の向上に合わせて改築や増設を重ねてきました。25mの高さの貯蔵庫がいくつも並ぶ光景に、圧倒されます。

まちの畑面積の内、1/3が小麦を育てている小清水町。単位面積当たりの収量は道内一だそう。長い日照時間と火山灰土という恵まれた環境はもちろんのこと、農家をはじめとした地域の人々の努力あってこそです。

今回は特別に、貯蔵庫の上まで登れることに。スタッフの誘導のもと、工場内を見学しながら登っていきます。

屋上に着くと、そこに広がっていたのは大パノラマ。雲一つない青空の中で、くっきりと稜線を見せる斜里岳と、そのふもとに広がる畑と町並み。高いところから眺めると、改めて畑の広大さに驚かされます。

加えて、畑を区切るように並ぶ防風林が十勝に比べて多いことにも気がつきました。「海に近い町なので風が余計に強くて、だから防風林がたくさん残っているんです」と吉田さん。ひとくちに「北海道らしい風景」といっても、気候や作物によって地域ごとに特色が表れる。小清水町ならではの自然と、それと土台とした人々の営みがあることを、強く実感しました。

風を切る心地良さを感じたり、気に入ったスポットをゆったり眺めたりと、ドライブでは味わえない楽しさがありました。今回のルートのほかにも、濤沸湖畔や小清水原生花園を訪れたり、隣の清里町まで足を伸ばしてみたりと、季節に合わせておすすめのコースを案内しているそう。少し足を伸ばせば異なる自然に出合えるのは、小清水町ならでは。今度はより長い距離を走って、このまちの魅力にもっと触れたいと思います。

もう一つのアクティビティ。濤沸湖のカヤック


小清水町の自然の豊かさに触れられるアクティビティはほかにも。その一つが、濤沸湖でのカヤック体験です。

春と秋に多くの渡り鳥がやってくることから、2005年にラムサール条約に登録された濤沸湖。野鳥をはじめとした貴重な生態系への影響を考え、「保全と利用のためのルール」により定められたルールで、一般の人がカヌーやカヤックの乗り入れすることはできません。しかし、「せっかくのすばらしい自然と湖の魅力を伝えたい」という思いを持ったまちの人々が協議会を設立し、自然を守りながら活用できる道を模索。その結果実現したのが、このカヤックです。

参加者は事前に濤沸湖についてのレクチャーを受け、湖面でガイドと共に野鳥や植物に関する記録を付けます。小清水町のカヤックは、単なる遊覧ではなく、環境保全の一端を担うアクティビティなのです。

6~8月という短期間にしているのも、回数や人数を小規模で行うのも、野鳥のことを第一に考えているから。環境を守りながら、人と自然の距離を縮めていく。多彩な鳥と豊かな自然が身近な小清水町だからこそ、アクティビティにおいても自然との共存を大切にしています。

身体を動かしてリフレッシュしながら、小清水町ならではの自然や風景に出合えるさまざまなアクティビティ。小清水町観光協会ではサイクリングカヤックツアーを行っており、どれも丁寧なレクチャーを行ってくれるため、初心者でも気軽に参加できるのがうれしいところ。緑豊かな季節を、小清水町で思う存分楽しんでみましょう。

スロウ日和編集部

サイクリングツアーでは、気軽な1時間のショートコースとたっぷり楽しむ3時間ののロングコースの2つが用意されています。予定に合わせて選んでみてくださいね。

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。