自然栽培家の服部吉弘さんが手がけるラララファームは、トマトをメインに、パプリカ、ショウガ、エンドウ豆、ほおずき、ズッキーニ、キャベツ、ハーブなど。少量多品目で50種類以上を栽培しています。農薬は使わず、野菜に対しては肥料を与えていません。服部さんは水や光、微生物といった目に見えないもののエネルギーを意識して栽培を行います。(取材時期/2018年6月)
Shop Data
LaLaLa Farm
住所 ニセコ町豊里67
電話番号 0136-55-8522
URL http://lalalafarm.com
青空の下、羊蹄山の麓。初めて訪れたラララファームは、とても心地良い場所でした。五反(約4960平方メートル)の敷地に、10棟ほどのビニールハウスが整然と並び、露地には青々とした元気な野菜が育っています。訪ねたのは、6月初旬。ハウスでは、トマト、パプリカ、ショウガ、エンドウ豆、ほおずきなどを。露地では、ズッキーニ、キャベツ、ハーブなどを栽培していました。
出迎えてくれたのは、真っ黒に日焼けした青年。主宰であり自然栽培家の服部吉弘さんです。「少し離れた場所に一町五反の畑があって、そこではニンジン、ジャガイモ、タマネギ、大豆なども育てています」と意欲的。トマトをメインに、あとは少量多品目。現在50種類以上を栽培しているそうです。
編集部がラララファームに興味を持ったのは、テレビで紹介されたジンジャー甘酒がきっかけでした。それが実においしそうだったので作り手を探ってみると……すでに人気レストランやモデルの間では評判の生産者だったのです。
発酵作用に着目して、自然派のその先へ。
ハウス内のトマトは、黄色い花が咲き始めたところ。それらがいきいきとエネルギッシュなことに驚きます。オーガニックだからでしょうか?「農薬は使わないし、野菜に対しては肥料を与えない。基本オーガニックですが、水とか、光とか、微生物とか、目に見えないもののエネルギーを意識しています」と、独自の考え方を教えてくれました。「たとえば光であれば、朝日は植物を成長させ、夕日は熟成や発酵を促進させて実を作る。そんな光の波長の違いを考慮して栽培方法に活かします」。
水は、羊蹄山の湧き水をふんだんに使用。また微生物の働きを最大限に活かして、根が元気よく伸びる土壌を作ります。「ここで大事なのが発酵作用。無限にあるエネルギーを、いかに土壌や植物に取り入れることができるのかを考える。こうして自然の循環のスピードを促進させるんです」。実は服部さん、今の考え方に至るまでには、さまざまな試行錯誤がありました。
個性的な農業を目指し、自分で切り開いた方法。
もともとはサラリーマン生活を送っていた服部さんですが、多忙な日々の中、「好きなことをして生きていきたい」、と一念発起。「自分の身体にも良くて、環境にも良くて、自分らしく生きていけることってなんだろうって思ったとき、農業しか思い浮かばなかったですね」。そして、大学時代に自転車で巡って憧れていた北海道へ。貯金も持たずに「研修させてください!」と飛び込んで、ニセコに2年、余市に2年、計4年間の研修を経て、9年前に新規就農します。
「1年目は有機肥料で栽培を始めたのですが、2年目に無肥料に切り替えたら、畑も野菜もどんどん痩せて、収穫量が5分の1くらいになってしまった」。この苦い経験の後、悩みながらニセコ酒造や自然酒の蔵元、寺田本家で酒づくりを体験。そうするうちに微生物と発酵の威力に気づいたのだそうです。
「それからは、農業がどんどん面白くなって」。発酵の効果を、夏は畑の土に、冬は甘酒などの加工品に。有機野菜をたっぷり使った塩麹や、ネーミングもユニークなラー油など、アイデアも広がっていきました。「農業って、作る人も、栽培する土質も、環境も違う。教科書通りやってもうまくいかないんです。だから、自分が思っていることを毎年試して、毎年確認している感じですね」。
この記事の掲載号
northernstyle スロウ vol.56
「深呼吸する旅へ」
スロウ編集部が、「心から行きたいと思える旅のかたち」を模索。旅先で出合える「自己の変化」にも目を向けた。