浦幌町の資源、ハマナスを活かして起業〈ciokay〉

浦幌町のシンボル、ハマナスを使って化粧品〈ロサ・ルゴサ〉を開発した(株)ciokayの森健太さん。なんと彼は大学卒業後新卒で浦幌町の地域おこし協力隊として関西から移住し、後に起業しました。町に定住する選択肢の一つとして、新たに仕事を生み出す「起業」という道を選んだ、森さんのライフストーリーを紹介します。ロサ・ルゴサについてのストーリーは、コチラから。

Shop Data

株式会社ciokay
住所 浦幌町字寿町7-1
電話番号 015-578-7185
電話受付時間 10:00~17:00
定休日 土・日曜
URL https://rosa-rugosa.jp

※上記事務所での販売は行っておりません

地域のことは地域の人で。そんな雰囲気に惹かれて

2017年に浦幌町に設立された株式会社ciokay。その代表を務めるのは、大学を卒業してわずか数年の青年だ。三重県出身の森健太さん。爽やかな笑顔と穏やかで親しみやすい物腰は、手がけるオーガニックコスメ商品ロサ・ルゴサに通ずるところがある。
森さんが浦幌町のことを知ったのは大学生のとき。まちづくりに携わる仕事がしたいという思いから、徳島県の会社が企画した浦幌町のツアー事業にインターン生として関わったことがきっかけだ。そこで森さんは、多くの一次生産者と交流を深める。
さらに、町が運営する「うらほろスタイル推進地域協議会」の活動にも興味を持った。浦幌町では、10年ほど前に唯一の高校が廃校となっている。放っておけば人材は流出するばかり。危機感を抱いた町は、「子どもたちが夢と希望を抱けるまちづくり」を地域一丸となって進めていたのだ。
「地域の人たちからいろいろな仕掛けを行っているのが面白い。浦幌町でなら、自分の糧にできるものがきっとあると思いました」と森さん。

自分たちの町を、自分たちの手で盛り上げていこう。地域に醸成されたそんな情熱と気運が、森さんの心を動かした。

地域のみんなとやりながら進める、初めての化粧品づくり

すでにもらっていた別会社からの内定を辞して、2016年に浦幌町の地域おこし協力隊員となった森さん。うらほろスタイルの「若者の仕事創造事業」を担当することとなる。浦幌を離れた子どもたちがふるさとに戻ってきたときに、身に付けた知識や技術を活かせる場を創出する事業だ。10年かけて培った地域愛をいかに発展させるかがテーマとなった。

浦幌町では子どもたちがまちづくりのアイデアを出し、実現に向けて大人が動くという取り組みが行われている。町の花であるハマナスを使った事業計画については2008年頃から子どもたちのアイデアとして議題に上っていた。町内の新たな産業を創出するという目的のもと、2013年から本格的な栽培と商品開発を開始。ハマナスは、ビタミンCやポリフェノールが豊富で、香りもいい。近年では美白や抗酸化作用が期待できることもわかってきた。そこで、ハマナスの化粧品づくりがスタートする。森さんは、その計画を中心となって担うことになった。

コンセプトは「自分たちが使いたいものを、自分たちの手で」。森さんは地域の農家のお母さんたちに広く声をかけ、開発チームを発足。「アトピーでも安心して使えるものがいい」、「保湿性を高めたい」、「香りにもこだわりたい」…。
そうした意見を集約し、製造を委託する企業との打ち合わせを重ねた。森さんにとっても初めての経験だったから、「進めながら勉強させていただきました」と振り返る。そうして完成したのが、合成着色料、合成香料、鉱物油、パラペンなどを一切使用しないオーガニックコスメ。道産トドマツ、道産ヒマワリ種子、ナタネなどから抽出したオイルで保湿力を。収穫後の生花を凍らせることで、華やかな天然の香りを引き出すことにも成功した。

ブランディングの観点から、パッケージ制作にも力を注いだ。化粧瓶や箱を彩るのは、鮮やかなハマナスのイラスト。町内のまちなか農園で本格的にハマナス栽培を開始し、開花時期に合わせて写生大会を企画。子どもたちに描いてもらったハマナスの絵を、パッケージに使用したのだ。ただ美しいだけ、カッコいいだけでは意味がない。浦幌町の資源や人の魅力が丸ごと伝わるものにしたいという思いが伝わってくる。
こうして約1年半の期間を経て、2017年に遂にお披露目を迎えたハマナスのオーガニックコスメ。ブランド名は、ハマナスの学名であるrosa rugosa(ロサ・ルゴサ)。

「やらずに後悔」はしたくないから

森さんは同時期に、ロサ・ルゴサの製造販売を担う会社を立ち上げる決意を固める。若くして起業することに不安がなかったわけではない。「本当にできるのかって、ずっとモヤモヤしていて」と、当時を振り返って苦笑する。起業しないという選択をすることもできる。けれど、「10年後、20年後にすごく後悔する自分の姿が浮かんだんです」。もしかしたら、失敗するかもしれない。そうだとしても、やらずに後悔するよりは、やってみて失敗するほうがいい。「動き出したらスッキリしました。一つひとつ、実現するためにはどうすればいいか? という方向へ悩みの質が変わってきた」。そして何より、地域の人たちが背中を押してくれたことが大きいと話す。

ロサ・ルゴサの作り手は森さんひとりではない。直接的・間接的な違いはあれど、地域住民一人ひとりがまちづくりに積極的に関わっていこうとする姿勢そのものが、ロサ・ルゴサという新たな町の魅力を生み出した。その意志は、社名にも現れている。ciokayとは、「私たちは」を意味するアイヌ語だ。
2018年4月に行われた浦幌町でのリリースイベント。パッケージのイラストを描いた子どもが「私の描いた絵だ!」と、ちょっと恥ずかしそうに、うれしそうに声をあげる姿が心に残っていると森さん。たくさんの応援の声は、森さんにとって何よりの力になった。

これからも、浦幌町と共に

全国の展示会や催事へ積極的に参加して知名度を上げると共に、今後は海外展開も見据えている。
2017年の「第3回ジャパンメイドビューティーアワード」では、試作段階の製品がコスメティック部門の審査員賞を獲得。審査員からは、ハマナスを使った新規性、香りや質感はもちろん、地域の人たちと一緒に作り上げてきたストーリー性が高く評価された。「東京ギフトショー秋2018」では、オーガニックアイテムのコーナーに出展。主催側や消費者から、香りの良さ、ベタつきのないしっとりとした使い心地に対する、うれしいコメントが寄せられた。なかには、「いつも夜寝る前に使って、心も身体も癒やしている」という愛用者もいたという。

浦幌町のことを、「チャレンジ精神旺盛な町」と表現した森さん。町のチャレンジが住民を動かし、生まれるエネルギーが森さんを惹きつけた。そして、商品開発や起業というチャレンジへとつながっている。「町の新しい産業として、そして雇用創出の場にしていきたい」と意気込みも十分だ。「浦幌町で、こういうことができる。その姿を見せていきたい」。森さんのチャレンジを見て育つ子どもたちが、いつの日か新しい挑戦に一歩を踏み出すときがくることを願って。

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Q&A

Q
自己資本はどのくらいですか?
A

北海道制度融資300万円、浦幌町新規創業等促進補助金約250万円、北海道中小企業応援ファンド 創業促進支援事業約85万円、浦幌町地域産業活性化補助金50万円です。補助金や融資の申請にあたっては各種機関の方のアドバイスを借りながら書類作成を行いました。「餅は餅屋」というたとえ通り、金融機関や公共機関として通しやすくするにはどういう数字が必要で、どういう計画が必要なのかは専門の方が一番知っていると思ったので。

Q
商品や事業のPR活動について
A

2018年4月に町内でリリースイベントを開催。6月から全国発売をスタートしました。その後は全国の展示会に出展して、知名度アップを図っています。

この記事の掲載号

北海道十勝・移住の本
りくらす vol.4

自分らしい生き方、より良い子育て環境を求めて、あるいは家族や仕事の都合で。北海道への移住を選択した人を訪ねる「りくらす」。

この記事を書いた人

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。