子どもたちが誇れる「ふるさと」へ ハマナスの花びらで作る、ロサ・ルゴサ

浦幌町の町の花、ハマナスの花びらを使った化粧品「rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)」。化粧品が誕生した背景には、老若男女問わず、町民みんなが町の未来を考えた地域愛と、それに感化させられた1人の青年の姿がありました。代表の森さんのストーリーは、コチラから。(取材時期/2018年10月)

Shop Data

株式会社ciokay
住所 浦幌町字寿町7-1
電話番号 015-578-7185
電話受付時間 10:00~17:00
定休日 土・日曜
URL https://rosa-rugosa.jp
※上記事務所での販売は行っておりません

地域の子どもたちに、メッセージを込めて。

浦幌町の地域活性化に向けた取り組みは、徹底して子どもたちにフォーカスしているところがひとつの大きな特徴です。11年前、町内唯一の高校が閉校。「このままでは、子どもたちは外に出て行くばかり」と危機感を抱いた町は、「うらほろスタイルふるさとづくり計画」と題し、地域の人たちと共にさまざまな取り組みを行ってきました。一貫して掲げてきたのは、子どもたちが夢と希望を抱けるまちづくり。進学などをきっかけに町を出ることになったとしても、「私のふるさと、こんなに素敵なところだよ」と胸を張って語れること。
それはまた、確かな希望にもなり得るのです。

浦幌の子どもたちは、中学3年生になると「うらほろ活性化案発表会」に参加。班ごとに、地域を盛り上げるためにどんなことをすればいいか、アイデアを出し合います。もちろん案を出すだけではありません。それらを実現させるのは、地域の大人たちの仕事。アイデアを出した子どもたちが成人を迎える年、その案がどのような成果に結びついたのかまでを知ることができるのです。

自分たちの言葉は、大人に届いている。そう実感できることは、大人への信頼感にもつながるはず。その体験は、子どもたちが大人になったときに、最大の効果を発揮してくれるのではないでしょうか。2007年から始まって、現在までに出されたアイデアは80個以上。その半分ほどは、何らかの形で実現に至っているのだそうです。

「浦幌の町の花、ハマナスを活用できないだろうか」。そんなアイデアが子どもたちの中から出てきたのは数年前のこと。2018年、その夢がついに実現することとなりました。ハマナスを使ったオーガニックコスメ「rosa rugosa」シリーズの誕生です。

ロサ・ルゴサの製造販売を担う株式会社ciokayを設立した森健太さん。社名は、「私たちは」を意味するアイヌ語です。

浦幌に移住。チャレンジによって得られる可能性


ロサ・ルゴサを手がけるのは、株式会社ciokay(チオカイ)。爽やかな笑顔が似合う代表の森健太さんは、三重県出身の24歳(2018年時)。大学卒業と同時に浦幌町の地域おこし協力隊に入り、2年目にして起業を果たすというスピード感には驚かされるばかりです。

まちづくりに携わる仕事がしたいというのが、森さんのかねてからの夢。大学生のとき、浦幌町のツアーを企画する会社でインターンシップをしたことをきっかけに、浦幌町のことを知り、多くの一次生産者たちと交流することとなります。「地元の人からいろいろな仕掛けをしているのが面白いなと思って」。チャレンジ精神旺盛なこの町でなら、自分の糧になるものがきっとある。浦幌という町のエネルギーが森さんを動かしました。

森さんは、うらほろスタイル推進地域協議会の「若者のしごと創造事業」を担当。浦幌を離れた子どもたちが帰ってきたとき、外で培った知識を活かせる仕事を創る必要があったのです。10年かけて少しずつ育んできた地域愛を、いかに発展させるかがテーマとなりました。

ロサ・ルゴサは、地域の夢の象徴として

ハマナスは、北海道の夏の風景には欠かせない花。濃い緑の葉の間に覗く、ぱっと目を引く鮮やかなピンクは気持ちまで明るくしてくれるようです。そして明治時代から注目されてきたのが、その上品な香り。石狩地方ではハマナスを使った国産天然香料の製造が計画されていたこともあったのだとか。ビタミンCやポリフェノールが豊富で、近年では、美白効果や抗酸化作用が期待できることもわかってきました。

そういった経緯もあって、ハマナスを使った化粧品づくりの計画が進んでいきます。商品の製造に関しては、オーガニックコスメの製造技術に定評のある大阪の会社に依頼。開発コンセプトは、「自分たちが使いたいものを自分たちの手で」。森さんは地域の農家のお母さんたちに広く参加を呼びかけ、開発チームを発足します。その中には乾燥肌の人、アトピーの人もいました。

多くの人が望んだのが、北海道の厳しい冬の乾燥にも耐えられる保湿力。そこで道産トドマツの葉、道産ヒマワリ種子、ナタネなどから抽出したオイルを加えることにします。そして、商品を特徴づける香りをいかに引き出すかも重要な課題でした。森さんたちはさまざまな手法を試した結果、収穫後の生花を凍らせて蒸留すると、最も香りが良いということに気づきます。試作をしては実際に使って、改良する。そうした試行錯誤の結果、合成着色料、合成香料、鉱物油、パラベンなどを一切使用しない、植物本来の恵みを実感できるコスメが完成。ハマナスの学名rosa rugosaをそのままブランド名としているところにも、思い入れの強さが感じられます。


森さんは、商品のブランディングにも力を入れています。パッケージのイラストを地域の子どもたちに描いてもらうというのも、ナイスアイデア。町内の「まちなか農園」で本格的に栽培を始めたハマナスは、2017年夏、たくさんの美しい花を咲かせました。森さんは写生大会を企画。子どもたちが思い思いに描いた愛らしいハマナスの絵が、rosa rugosaの「顔」になっています。「完成した商品が初めて手元に届いたときは、すごく感動しました」と、顔を綻ばせる森さん。同時に、作り手としての責任感も芽生えてきたのだそうです。携わった町の人々にとっても、どんなにか誇らしくうれしい出来事だったでしょう。ロサ・ルゴサの作り手は森さんひとりではなく、浦幌の人たち。直接的、間接的な違いはあれど、地域の住民一人ひとりが積極的にまちづくりに関わっていこうという姿勢そのものが、ロサ・ルゴサの最大の軸となっています。

商品化されたばかりのロサ・ルゴサですが、森さんは既に次なるステップを見据えていました。本州の展示会に積極的に参加する他、海外展開も視野に入れて。「浦幌町で、こういうことができる。その姿を見せていきたい」。

たくさんの夢が集まって響き合い、さらに大きな夢になっていく。そんな循環が、生まれつつあるようです。

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この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.57
「自然がくれる薬箱」

自然の力を借りて自分らしく心豊かに暮らす人たちの暮らしの知恵を集めた。漢方や薬草、湯治など、北海道流東洋医学を特集。

この記事を書いた人

家入明日美

家入明日美

火の国・熊本出身。野生動物の勉強がしたくて北海道へ移住し、自然のことを伝えたくてスロウ編集部に入る。馬とナキウサギ、やんちゃな飼い猫と怒髪天が心のオアシス。