白樺の樹皮で編み上げたショルダーバッグには、北国の空気感が似合います。透き通るような水色の春の空に。木漏れ日が躍る夏の大地に。色とりどりの落ち葉を踏みしだいて歩く、秋の夕暮れに。真っ白な雪に青い影がひっそりと落ちる、静かな冬の日に。白樺樹皮細工を生業とする工房ameiroの嶋中康祐さんにお願いして、スロウ読者のために特別なバッグを作ってもらいました。
Shop Data
工房ameiro
URL https://ameiro.jimdofree.com/
材料を得るところから、すべて手作業で。
嶋中さんの白樺細工は、樹木から樹皮を剥ぐところから始まります。樹皮の採取に適しているのは、おおよそ6月から7月まで。それ以外の季節でも、街路樹としての役割を終えて伐採される白樺があると聞けば、伐採現場まで赴いて丸太ごと回収することもあるそうです。
切り剥がして十分に乾燥させておいた樹皮を等間隔にカットし、細工に適した厚さに微調整していきます。樹皮は年輪のように幾層にもなっていて硬いため、そのまま細工に使用することはできません。「まずは、ざっくり半分くらいの層で、外側を剥ぎ取ります」。
さらに、指先の感覚を頼りに何層分かを剥がしていきます。「厚いと、折り曲げただけでパキッと割れてしまうことがあります。こうして適度に薄くすることで、しなやかさが出てくるんですよね」と、にっこり。これが、一番皮と呼ばれる最も良質な部分。今回のバッグであれば、こうして作られる樹皮テープがだいたい80本は必要だそうです。
そしてようやく成形の段階へ。テープを組み合わせ、先の尖った編み道具を使いながら1本ずつ編み上げていきます。カサカサ、シュッシュッとテープが擦れる乾いた音がどこかリズミカルに聞こえるのは、作業をする嶋中さんがとても楽しそうだからでしょうか。この日の取材は、大樹町の宿泊施設「インカルシペ白樺」の敷地内にある作業スペースで。ストーブでは白樺の薪が燃え、パチパチと音がします。窓際のてるてる坊主が、嶋中さんの様子を見守っているようでした。
時間をかけて、大切に育てる愉しみ
制作途中のバッグに触れてみると、意外にも厚みがあることがわかります。「だいたい六重くらいにしてあります」。樹皮テープを作る際に半分に剥がした残りの部分、二番皮を芯に編み込むことで、さらに強度としなやかさを上げているそう。なのに、とても軽いのです。飴色になるまで、時間をかけて大切に育てる愉しみ。
「少しでも、消費するばかりの社会から変わっていけたら」。願いを込めて口にした嶋中さん。別の形に加工することで、その白樺が歩んできた時間と同じくらいの時間を共に過ごすことができます。最初は少し硬く感じても、次第に持ち主の手に馴染んで柔らかくなり、色も深くなってくるので、その変化も楽しんで。飴色になるまで、大切にじっくり、育ててください。
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