たくさんの縁によって彩られて。小さなパンカフェ〈coffee & breadえん〉

上富良野町にあるパンカフェ「coffee&breadえん」。店主夫妻お気に入りの古道具などで整えられた店内で提供されるのは、道産小麦を使った焼きたてのパンや焼菓子、スイーツ、そしてコーヒー。たくさんのバラエティ豊かなメニューを前に「どれにしよう」と、ついつい迷ってしまうかもしれません。(取材時期 2016年2月)

Shop Data

coffee & breadえん
住所 空知郡上富良野町西9線北34号 深山峠観覧車下  
電話番号 0167-45-2425
営業時間 11:00~15:30 ※完売次第終了
定休日 水・木曜 
Instagram @coffee.bread.en

この地で出会った、人、自然、食材。いただいた縁をつなげていきたい。

美瑛町と上富良野町の境。晴れた日には十勝岳の勇壮な姿を望める場所に、2014年の春、小さなパンカフェが誕生した。えん、と名づけられたその店を切り盛りするのは、野口順平さん、陽世さん夫妻。コーヒー好きで、道内のカフェで修業を重ねた順平さん。小さい頃からパン作りが好きで、パン屋で経験を積んできた陽世さん。真っ白な雪が積もる頃に訪れた店では、薪ストーブがパチパチと優しい音を立て、香ばしいパンとコーヒーの香りがふんわりと漂っていた。

店のオープンにあたって、半年ほどかけてコツコツと準備を重ねてきた2人。中でも地元の生産者たちとの交流は、大きな刺激になったと話す。「農家さんたちが、どれだけ多くの手間をかけて作物を育てているのか、間近で見てきました。だから自然に使いたいと思えたし、その思いや大変さも含めて、消費者に伝えたいとも思うんです」。

店で使う小麦は、上富良野の興農社と新得町の若原農場で収穫されたもの。野菜もできるだけ近郊の「土がついた状態のもの」を使う。野菜が錬り込まれたパンは、店の人気メニューのひとつでもあるそうだ。水は近くの湧水地から汲んできた十勝岳の伏流水を使っており、「コーヒーが、とってもまろやかな口あたりになるんですよ」と、順平さん。コーヒー豆も札幌のいわい珈琲に何度も通って厳選したものを使用。テイクアウトメニューも豊富なので、ドライブがてらに立ち寄る客も多いという。

そして、この場所に店を構える決め手のひとつにもなったという美しい自然が、さらに特別な時間を演出してくれる。「夕方になると、空と山の色が少しずつ変わっていくのが、とてもきれいで…。冬は特に好きですね」と、とっておきの笑顔で話してくれた。ここに来た縁、ここで得た縁。ひとつずつ、少しずつ。2人のペースでゆっくりと、さまざまな縁によって、「えん」は形づくられていくのだろう。

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.42
「保存食のある冬」

発酵、乾燥、燻煙…。完成までに時間と手間をかけて作る「食」。受け継がれる知恵とわざ。保存食にあらわれる、作り手の「生き方」を訪ねて。

この記事を書いた人

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。