病みつきになる、無添加カレーの物語〈Dutch-Oven(ダッチオーブン)〉

化学調味料無添加を必須条件に、玉ねぎをはじめとしたたっぷりの野菜と、丸鶏のスープ、約15種類のスパイス。素材の味をしっかりと引き出すことだけを追求した結果、完成までにかかる時間は、なんと1週間。インドの(煮込まない)スパイスカレーとは少し違い、小麦粉を炒めて作る欧風カレーとも違う。曰く、北海道の素材と、「煮込む(熟成する)ほどうま味を感じる」日本の食文化を合わせた、「北海道カレー」です。

Shop Data

Dutch-Oven(ダッチオーブン)
住所 札幌市豊平区福住2条4丁目2-24
電話番号 011-598-7798
URL https://www.dutch-oven.jp/

トロトロになるまで炒めた野菜と15種類以上のスパイス、鶏のスープを組み合わせます。

化学調味料無添加がうれしい!ダッチオーブンの極旨カレー

ピリッとスパイシーな中に感じられる深いコク、そして甘み。化学調味料や添加物が一切使用されていないと知ったときには心底驚きました。独特の味の虜になって5年ほど、何度も食べていたのに、そのことに全然気がついていなかったのです。

「食べてみて、おいしいかどうか。それがすべてと思っています」。ダッチオーブンの店主・小形英樹さんの言葉です。現に、店を訪れても「こだわり」を解説する説明書などはなく、メニューの裏にひっそりと「化学調味料不使用」の文字があるだけ。

とはいえ小形さんのカレーに懸ける思いには、その味に比例する深い物語がありました。小形さんは、長く食品会社の商品開発に携わってきた人。当時から、「化学調味料を使うのがあたりまえ」の食品に疑問を抱いていたといいます。「これでいいのか? と思うことが多かった」。人の舌で確かめる感能検査から、科学的な検証まで。企業の研究室で納得できる商品開発を推進する中で気づいたことは、食品の知識を活かし手間暇をかければ、無添加でもおいしいものが作れる事実。

小形英樹さん。大阪出身ですが、進学で訪れた北海道の虜になり、以来北海道で暮らしています。

手間をかけるとおいしくなると、知ったから。

独立して妻の智子(さとこ)さんと一緒に店を開いたのは2010年のこと。もっと自分の力で食を突き詰めたいとの思いに加え、元々カレー好きだったことも後押し。「前職で手間をかけておいしくする方法が存在することを知ってしまったから、こだわらざるを得なくなったんです」。化学調味料無添加は必須条件。玉ねぎをはじめとしたたっぷりの野菜と、丸鶏のスープ、約15種類のスパイス。素材の味をしっかりと引き出すことだけを追求した結果、完成までに1週間を要するスペシャルなレシピが出来上がりました。

採用した方法は、低温熟成。野菜を約半日炒め、スパイスを投入し一晩熟成。スープを合わせ、熟成。さらにスパイスを投入し、また熟成。工程ごとに寝かせることで、味に深みが増すのだそうです。

あまりに手間がかかる上、生産量が限られるため、注文が多いときには徹夜で仕込みをすることも。「自分のためならこんなに頑張れない(笑)」と苦笑いする小形さんですが、食べてくれる人のことを思うと、どうしても妥協はできないようです。

忙しい店舗営業の合間に通販を始めたのも、遠方のファンから懇願されてのこと。「店の味をそのまま届けられなければ意味がない」と、レトルトではなく、冷凍を選びました。

パッケージは変更予定です。

店の味を「そのまま」、まず一度食べてみて。

さて他にもこだわりは数多あるのですが、何より言いたいことは「まず一度食べてみて」。とろとろになった野菜と鶏のスープのうま味。しっかりとスパイスが効いた味の奥に感じるショウガやリンゴのフルーティなアクセントも堪りません。インドの(煮込まない)スパイスカレーとは少し違い、小麦粉を炒めて作る欧風カレーとも違う。曰く、北海道の素材と、「煮込む(熟成する)ほどうま味を感じる」日本の食文化を合わせた、「北海道カレー」です。

店舗ではスープカレーも提供しています。
この記事の掲載号

northernstyle スロウ62号
「森に教わる未来の暮らし」

北海道の木で家を造れるか?森とのつながりと循環という観点から、北海道各地にいる「住環境」の作り手たちに会いに行く。

この記事を書いた人

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片山静香

雑誌『northern style スロウ』編集長。帯広生まれの釧路育ち。陶磁器が好きで、全国の窯元も訪ねています。趣味は白樺樹皮細工と木彫りの熊を彫ること。3児の母。