革小物の職人に憧れて20年。KONOMICHIが選ぶ道

2018年、「前を通るたびに、店をやるならここが良いなと思っていた」という、南区の自然豊かな場所に工房兼ショップの「KONOMICHI」が誕生しました。オーダー作品はもちろん、オリジナルの作品にみられる洗練された技術は、長い下積み期間があってのこと。20年かけて夢を叶えた籏谷(はたや)さんのこれまでを尋ねてきました。

Shop Data

KONOMICHI
住所 札幌市南区常盤6条2丁目107
電話番号 011-522-8325
営業時間 11:00~17:00
定休日 月・金曜
URL https://www.instagram.com/konomichi.leather/?hl=ja

好きを仕事にするまで、20年。

好きなこと(趣味)を仕事にする、ということに関しては昔から賛否さまざまな議論が交わされていますし、「仕事にした瞬間に、好きなことを楽しめなくなる」という論が多いのも事実。きっと、好きなことであるが故に些細なミスが気になったり、自分へも周囲へも妥協を許せなかったりするからでしょう。

しかし、その人が不幸なのかと言えば、必ずしもそんなことはないと思います。

KONOMICHIの籏谷淳実さんにとっての革製品づくりは、まさにそんな仕事でした。始まりは、20年ほど前、革製品のショップに勤めていたときのこと。店でもらった革の端切れでライターケースを作ったことをきっかけに、次第に革加工にのめり込んでいく籏谷さんがいました。

いつかは職人になりたい。しかしそんな夢も、どこか実体のない雲のようなもの。何をどうすればいいかを自分なりに考えた結果、店を開くにはお金が必要だからと、自宅で作品を作りながら分電盤工場に10年程勤めました。けれど、開業に向けての具体的な動きはなかなか進まなかったと言います。

そんな折、転機となったのは、不用意に大きなケガをして1ヵ月間仕事を休まざるを得なくなったこと。「大げさかもしれませんが、いつ死ぬかわからないなって思ったんです」。こうしちゃいられないと奮い立った籏谷さんは、革のバッグや小物を製造する道内の大手メーカーに飛び込みで就職の直談判。見事採用され、職人として経験を積みました。そして6年間の修業の後、2018年、自宅のある札幌市内に遂に工房をオープン。「前を通るたびに、店をやるならここが良いなと思っていた」という、南区の自然豊かな場所です。

幸いなことに会社も独立を後押ししてくれ、今もビジネスパートナーとして良い関係を築いています。もちろん、前職で培った高い縫製技術や素材の目利き、そして断面(コバ)仕上げの妙なども、独立してからのKONOMICHIを支える財産。「前の会社からの後押しがなければ、独立に踏み切れなかったと思います。正直、勤めた6年の間にも諦めて別の仕事をしようと思った時期もありましたし…。ずっと、店をやるのに必要なのは“お金” だと思っていたんですが、違いました。お金よりも“人とのつながり”が大事なんだなって、改めて感じています」。

開業の思いを抱きながら、20年近くもの間作品を作り続けてきた籏谷さん。職人歴は長いですが、工房の主としてはまだまだスタート地点です。「作りたいものはたくさんあるんですが、それを商品として納得いく形にするのが難しい。仕上がりが未熟だと思うこともたくさんありますし、今も日々改良中です」。

何度諦めかけても、どうしても諦めきれなかった夢を叶えた籏谷さんは、生みの苦しみも“楽しさ”のひとつとして受け入れているように見えました。

これから先、確かな技術の上に、KONOMICHIとしてのオリジナルの世界観がどんなふうに築かれていくのでしょうか。楽しみでなりません。

籏谷さんの工房を訪ねたとき、壁際に立てかけられた色とりどりの帆布に目を奪われました。福寿草の花のような濃厚なイエロー、草のような深いグリーン、そして、日の出前の雪のように憂いを帯びたブルー…そうそう、こぞうの頭の葉っぱのような、可愛らしい黄緑色もありました。「北海道の風景みたいな色だなぁ」と思っていたら、籏谷さんがこれらの帆布と革を組み合わせて、A4サイズのトートバッグを作ってくれることになりました。

持ち手、ボディ、底面の色の組み合わせは、すべてスロウオリジナル。レザーならではの高級感と、色合わせの遊び心、そして、プライベートにもビジネスにも使いやすいサイズ感にもこだわりました。一つひとつ、籏谷さんが大切にミシンで仕上げますので、完全受注生産とさせていただきます。納期は平均2週間ほど。春のお出かけに持ちたいトートです。

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この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.58
「キャンドルに灯す思い」

美しく豊かなキャンドルのある暮らし。炎のきらめきを見つめれば、次第に心が凪いでいくのを感じられる。

この記事を書いた人

片山静香

片山静香

写真と文で自由に表現することに憧れて、編集部へ。10年を迎えても編集の楽しさはずっと変わらず、少しも飽きません!手仕事が生み出すもの、中でも陶磁器が大好きです。