温もりのある空間でいただく、本格的なパスタとスイーツ〈くるみ食堂〉

くるみ食堂は、寺江浩平さんと妻のあかねさんが営む、夕張にあるカフェです。家庭的な雰囲気のある店構えとは裏腹に、味と盛り付けは本格的。浩平さんは料理の道を、あかねさんは製菓の道を、子どもの頃からまっすぐ歩んできました。さまざまな場で経験をつみ、浩平さんの故郷である夕張で店をオープン。ここにはふたりの食や地域に対する大きな思いが詰まっています。(取材時期 2022年3月)

Shop Data

くるみ食堂
住所 夕張市沼ノ沢826-48
電話番号 0123-57-7727
営業時間 12:00~20:00
定休日 水・木曜日
Instagram @kurumishokudou

故郷への思いを抱きつつ、子どもの頃から歩んできた食の道

くるみ食堂のパスタには、良い意味で期待を裏切られた。こうした「カフェ的」な場所で食べるパスタは、気軽にお腹を満たす「軽食」という面が大きいと思っていたが、店主の寺江浩平さんが作るパスタは、「イタリアンのコース料理の一品」の味がした。つまり「本格的でおいしい」ということだが、浩平さんの経歴を聞けば納得。なんと小学生の頃から料理の道を志し、一度もブレることなくここまで歩んできたそうだ。

出身は、夕張市。祖父母が苫小牧市でドライブインを営んでいたことから、飲食店の仕事が身近な存在だった浩平さん。札幌市内の調理学校を卒業し、ホテルやバルで10年余りの経験を積み、帰郷。2021年秋に妻のあかねさんと2人でくるみ食堂をオープンさせた。

夕張に戻ったのは、高校卒業まで過ごした故郷への愛情ゆえ。「とにかく人が温かくて、好き。財政破綻してからのマイナスイメージが悔しかった」。明るい話題を提供し、見返したい気持ちだったという。

一方のあかねさんはスイーツ担当。こちらも子どもの頃からお菓子ひと筋。浩平さんと同じホテルにパティシエとして勤務していた縁で結婚した2人。「お菓子づくりを続けられるなら」と、一緒に夕張にやって来た。

店舗となる三角屋根の建物にちょうどよく出合えたことにも背中を押され、無事開業。そんな開業物語は、文句なしに胸を打つ。浩平さんの郷土愛も、夫妻それぞれの「食」への真摯な姿勢と人柄も、店舗取得の経緯も、どこを切り取っても良い。

しかしやっぱり最後にもう一度主張しておきたいのは、料理のおいしさ。ランチもスイーツも、誤解を恐れず言うなら、「ここらではなかなか食べられない味」だと思う。「この店が、夕張に来る理由になれたら」と話す夫妻の夢は、きっともうすでに少しずつ、叶い始めている。

くるみ食堂

ランチが12:00~15:00、カフェが15:00~17:00、
ディナーが17:00~20:00です!

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.71
「白樺が拓く、森と人の日々」

北海道の各地で目にする樹木、白樺。樹皮細工をはじめ、「材」としての活用にも注目が集まる今、その恵みと可能性を改めて見つめます。

この記事を書いた人

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片山静香

雑誌『northern style スロウ』編集長。帯広生まれの釧路育ち。陶磁器が好きで、全国の窯元も訪ねています。趣味は白樺樹皮細工と木彫りの熊を彫ること。3児の母。