月に1度、「本当に食べたいもの」を考える。〈おうちごはん野の〉

写真手前から時計回りに、一番人気の『野の定食(1,650円)』。いけだ野の卵や駒ヶ丘牛乳を使った『プリン(440円)』、冷めてもおいしいコーヒー『ハルちゃんブレンド(550円)』。

Shop Data

おうちごはん野の
住所 札幌市南区簾舞94-2
電話番号 090-9436-5256
営業時間 金・土曜 12:00~15:00、17:00~20:00

日・月曜 12:00~15:00
定休日 火~木曜、不定休あり
URL https://nonoikeda913.wixsite.com/nono
楽しみ方 畑の収穫時期に訪れて、野菜をたっぷりいただく

本当に食べたいものって何だろう。心に耳を澄ませて

「食べものが身体を作る」ということは頭で理解していても、現実にはつい不摂生をしてしまうことも多い。そんなときは、「おうちごはん野の」の池田奈穂子さんが作る優しい料理をたっぷりといただいて、身も心もリセットしてみるのがいい。

父の夢の続きを実現させる場所

奈穂子さんは2017年、30年以上務めてきた教員としての仕事を早期退職し、野のをオープンさせた。場所は札幌市南区の街はずれ。30年ほど前に父と母が開墾した土地だ。「父は60歳の時にこの場所にきて、畑を作って鶏を飼い、夢だった農的暮らしを実現させたのです」。72歳で亡くなった父の「あと5年早く始めていればもっといろいろできたのに」という言葉が忘れられず、55歳を目途に新たな挑戦をすることを目標にしてきた奈穂子さん。現在は弟が養鶏を引き継ぎ、平飼い有精卵を生産、そして奈穂子さんは夫と共に、農薬や化学肥料を使わない野菜の栽培と野のの経営をしている。

体験に基づいた、偏らない「自然食」。

提供する料理は、自家製の野菜や卵を中心とした「自然食」。主菜や味噌汁は注文を受けてから作り、電子レンジ等は使わずに温かい料理を提供する。これらさまざまなこだわりは、すべて実体験に基づいている。
子どもの頃からアトピーのような症状に悩まされてきた奈穂子さん。原因と思われるのは、医者の勧めでグルタミン酸ナトリウムを過剰に摂取したこと。また、20代の頃に食を見直そうと菜食を始めたのが、タンパク質不足で逆に不調に。回復までには1年以上かかったという。「いろいろな経験をしましたが、今は『食べたいものを食べる』のが大切だという考えに落ち着きました」。

何事も、偏りすぎるのは考えもの。野のでは菜食主義者向けのメニューから、唐揚げやカツ、カレーなどの肉を使った料理まで揃えている。「もちろん、お肉も抗生剤などを一切使っていない安心なものだけを仕入れています」。
自分が本当に食べたいものって、何だろう。週に1度、せめて月に1度だけでも、身体の声にじっと耳を澄ませてみたい。

池田奈穂子さんと、夫の中神治夫さん。治夫さんは店の環境整備係。一人語り芝居の役者としても活躍中。
この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.66
「思いを叶える場所へ」

移住やリノベーションなど、暮らしをさまざまに「変える」ことで、思いを叶えられる場所を模索する人々の物語をご紹介。

この記事を書いた人

アバター画像

片山静香

雑誌『northern style スロウ』編集長。帯広生まれの釧路育ち。陶磁器が好きで、全国の窯元も訪ねています。趣味は白樺樹皮細工と木彫りの熊を彫ること。3児の母。