西部地区の古民家で、身体に馴染む食事を。〈ごはんおやつシプル〉

函館市船見町にあるシプルは、山田麻由さんが家族と共に暮らしながら店を営む場所です。常盤坂の上にある建物を改装し、2018年に店を開きました。「ちゃんとしたごはんが食べられる場所にしたかった」という麻由さんが手がけるのは、品数も多く彩り豊かな食事が楽しめます。旅の途中、ほっとする食事と港町の空気を味わいたくなったときに行きたいカフェです。(取材時期 2020年5月)

Shop Data

ごはんおやつシプル
住所 函館市船見町7-24
電話番号 0138-76-8930
開館時間 11:30〜14:30(L.O.)、17:00〜18:30(L.O.)
定休日 水曜、第1・3木曜
Instagram @siple_hakodate

海が見える坂の上で。

常盤坂の上の、海が見えるところ。耳を澄ませばカモメの鳴き声がして、辺りには昔ながらの古建築がぽつぽつ並ぶ。船見町という地名がしっくり馴染む住宅街の一画に、シプルはある。

赤い屋根と、伝統的な造りの門構え。中に入ると立派な梁が残されていて、深みのある木材の色に時の流れを感じる。ここは、山田麻由さんが家族と共に暮らしながら、店を営む場所。空き家になっていた物件を改装し、2018年に店を始めた。

江差町に祖母の家があり、函館にも時々旅行に訪れていた麻由さん。「函館の西部地区って素敵だなと、ずっと思っていました」。札幌の飲食店で働きながらも、暮らしながら店ができる一軒家を探していたところ、船見町のこの建物と巡り合う。

「純粋にこの場所が好きだなぁと思ったのと、観光地からは少し距離があるところも、自分たちにちょうどいいような気がして」、この場所で店を開こうと心に決めた。


改装は、常盤坂の古民家で暮らす建築家の富樫さんの力を借りながら、できるだけ自分たちの手で行った。「畳の下から出てきた材を床に使ったり、お風呂をドリルで壊したり。本当に大変だったけど、この建物を活かせて良かったなと今は思っています」。

「ちゃんとしたごはんが食べられる場所を」作りたくて。

『今週のごはん(1,350円)』。この時のメインは、タラのムニエル長ネギソース。メニューの詳細はInstagramから確認を。

店のメニューは、夫婦で作る。麻由さんは和食をメインにした食事、夫の都志樹(としき)さんはピザとパスタを担当。他に、ケーキなどのおやつもある。料理のメインは週替わりなので、毎週ランチに訪れるのを楽しみにしている地元の人も多い。

「ちゃんとしたごはんを食べられる場所にしたかった」と、麻由さんは言う。品数も多く彩り豊かな食事はどれもほっとする味わいで、野菜がたっぷり摂れるのもうれしい。どうしても栄養が偏りがちな旅先で、こんなお店に出合えたら、心も身体もほっとするだろう。

店名は、原理原則を表す英語「プリンシプル」からとって、シプル。基本的なことを、シンプルに。あたりまえのことを、あたりまえに。海が見える坂の上で、これからも。

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.67
「小さな菜園を持ったなら」

育てる野菜も育て方も活用方法も人それぞれ。作物の形を眺めたり、ただ畑で過ごしたり。食糧を得るだけではない楽しみ方がそこにある。

この記事を書いた人

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立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。