今では東川本店の他、旭川駅前にも店を構える人気店。そんな轡田さんの始まりは、本屋で出合った1冊の焙煎教本からでした。豆の変化をコントロールできる焙煎にのめり込んでいきます。趣味が高じて辿り着いたスペシャルティコーヒーの世界。素材の良さを最大限引き出すため、仕事となった今も、轡田さんの勉強は続きます。
Shop Data
yoshinori coffee
住所 東川町北町12丁目11-1
電話番号 0166-56-0099
営業時間 10:00~18:00
定休日 水・木曜
URL http://www.yoshinoricoffee.com
サラリーマンから珈琲焙煎の世界へ
今や東川町の人気店。2017年には、ローストマスターズチームチャレンジに北海道チームリーダーとして参戦。審査員大賞1位を獲得するなど、焙煎人の轡田芳範(くつわだよしのり)さんは、幅広く活躍している。彼の現在に至るまでの経緯は面白い。「焙煎を始めたのは、2011年の秋。趣味で焼きだしたんです。あの小さい焙煎機で」と、店の片隅にちょこんと置かれた、フジローヤルの小型焙煎機を指差す。「200グラムを焙煎できるあの機械は、結納返しなんです(笑)」。
当時サラリーマンだった轡田さん。あるとき本屋で一冊の本を手に取る。その名も『コーヒー自家焙煎教本』。「その中で、著者宅で自家焙煎体験をさせてくれるって書いてあったので、東京まで行ってみたんです。そしたらまる一日みっちり、ヘロヘロになるくらい焼かせてくれたんですよ。豆、10キロくらいはあったのかなぁ」。
それまでは珈琲好きではあったものの、豆を焼きたいという願望はまったくなかったが、「やってみたら、これが面白い! 豆の変化を、自分でコントロールすることができるんですから」と、一気にのめり込んでいく。「あくまでも趣味なので、どうやったらおいしくなるんだろう、って探究し始めると、どんどんいい豆がほしくなる。で、さらに探し出す…」。その過程で、“スペシャルティコーヒー”を掲げる店に出合う。札幌の「工房 横井珈琲」だ。「ここで飲ませてもらった珈琲が、衝撃的だった。これは、僕が知っている珈琲じゃない!」。即座に「生豆を分けてください」とリクエストしたそうだが…、「『素人に分けるような豆じゃない。代わりに日本スペシャルティコーヒー協会というのがあるから、そこに入ったらいろいろと勉強できるよ』と教えてもらって、『はい、わかりました!』ってすぐ入会したんです」。
その後はセミナーに通い、カッピングや焙煎技術も学び、コーヒーマイスターの資格を取るべく勉強に励み…。いつしか店をオープンするまでになっていた。
常日頃から技術を磨き、さらに上を目指す
そんな轡田さんが営むヨシノリコーヒーは、もちろんスペシャルティコーヒーにこだわっている。店頭に並ぶのは、定番ブレンド4種と季節のブレンド1種。さらにストレートが5~6種。いずれも地域や生産者がしっかり明記されている。「どんな人がどんな農園で作っているのか、というようなトレーサビリティが明確であること。さらには協会が定めた判断基準があって、8項目で100点満点。80点以上を取った豆がスペシャルティとして出回ります」。
トップクラスの豆から、さらに轡田さんのフィルターを通して厳選される豆には、どんな選択基準があるのだろうか?「焙煎技術はもちろん大切ですけど、やっぱり素材(豆)が重要です。素材にない味は、どんなにうまく焼いても出てこないので」。その上で、豆のポテンシャルを最大限に引き出すように焼く。「うちの特徴は甘さ。あとはクリーンに感じること。この2点を意識しています」。
それができるようになるには、やっぱり経験がものを言う、と轡田さん。「常日頃から、カッピングなどの技術を磨くようにしているし、いろんな人とセッションすることも大切にしています。ひとりきりでやっていたのでは、自己満足で終わってしまうかもしれないから」。そういう面でも、協会に参加することは有意義なのだと、焙煎人にとっての横のつながりの重要性を教えてくれる。
昨年は、焙煎人を目指す弟子も入った。店を任せられるので、轡田さんは、今年は初めて海外の買い付けにも参加する。「生豆を買いに行くことを主な目的にボリビアへ。軽井沢の丸山珈琲の社長に同行させていただきます」とうれしそう。轡田さんの焙煎熱は、まだまだ留まるところを知らない。