タイでの暮らしと旭川の風土を、掛け合わせて。〈小さなタイ食堂 トコ〉

旭川市にある小さなタイ食堂 トコは、タイで暮らした経験もある、牧野理恵さんと夫の博幸さんが営む店。現地で覚えた料理の味を元に、土地に根差したタイ料理を作っています。店に漂うスパイスの香りと、あちこちに置かれたタイの雑貨、そして素材選びにもこだわった料理。旅する気分を味わいながら、ここ旭川の風土を感じてみませんか。(取材時期 2021年12月)

Shop Data

小さなタイ食堂 トコ
住所 旭川市東旭川町東桜岡500-9
電話番号 0166-67-9173
営業時間 11:30~14:30、18:00~21:00
定休日 日・月・火曜、不定休あり ※営業日や最新情報はInstagramからご確認ください。
Instagram @toco_159

目指すのは、この土地ならではのタイ料理

凍(しば)れた冬の空気と、南の国を思わせるスパイスの香り。小さなタイ食堂トコの料理は、凍てつく寒さと日の短さに縮こまっていた心と身体を、温かいところへ連れ出してくれた。

「この土地ならではのタイ料理をやってみたくて」とは、牧野理恵さん。夫の博幸さんと共にタイのチェンマイで暮らした後、2021年の春に博幸さんの故郷である北海道へ移住。その数ヵ月後の8月に店を開いた。

牧野理恵さんと博幸さん。博幸さんは旭川の職業訓練校の木工科を卒業し、現在はフリーの木工家としてオーダー家具や店舗の内装などを手掛ける。

準備期間の短さに驚くが、「無理したわけじゃなく、自然な流れでした」。縁あって、旭川市桜岡地区の建物と巡り合った。理恵さんは元々、「ごはんを作って周りの人たちに楽しんでもらうのが好きだった」し、博幸さんはDIYなど手を動かすことが得意だった。現地で覚えた料理の味や言葉、コツコツ集めてきたタイの食器や雑貨類が揃っていた。これまでの経験を合わせたら、本当に自然な流れで店を始められたのだ。

素材選びにもこだわった料理で、ここの風土を伝えたい

「桜岡とチェンマイの風景って、どこか似てるんです」。平らな土地に田んぼが広がり、ぽつんぽつんと住居が並ぶ。ゆったりした空気まで似ているそうだ。「料理だけじゃなく、タイの人々の人柄や生活、文化や芸術もすごく好きで。店に来たお客さんが『タイに旅した気分を味わえた』と喜んでくれることが、本当にうれしい」と、理恵さんは笑う。

プレートには、ナンプラー麹や発酵キノコなど、発酵の力を取り入れた惣菜が盛り付けられていて、どれもうま味たっぷりでおいしい。この土地に根差したタイ料理を作りたいという思いから、「美瑛町の農家さんにタイハーブを作ってもらったり、信頼している生産者さんから野菜や卵を仕入れたり」と素材選びにもこだわっている。

5種類程度の惣菜が週替わりで楽しめる『食べて旅するタイプレート(1,650円)』。冬場は、生姜や根菜など身体を温める素材を使うように心がけているそうだ。

「ここに来て、まだ半年と少し。これから季節をひと巡りして、もっとこの土地の風土に触れていきたい。そうやって、ここならではのタイ料理を作っていきたい」。理恵さんと博幸さんが、タイで見てきたものと、旭川で見ていくもの。二つを掛け合わせて作る"これから"は、きっと素敵に違いない。

牧野さん

ディナーは2日間前までの完全予約制です!

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.70
「北のチーズは、脈々と」

北国の風土に寄り添ったチーズづくり。この地で脈々と継承されながら、独自の変化を遂げてきたその技術は、これから先も、未来へと繋がっていく。

この記事を書いた人

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立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。