散歩するように巡る、緑の景色。〈地蔵サイクル 田中康之さん〉

道北の町・下川町で暮らす人たちを訪ねる特集『下川町でスロウ日和』。今回登場するのは、地蔵サイクルの名でガイド業を営む田中康之さん。下川へ移住する前からサイクリングを楽しんでおり、2021年より事業として取り組むことに。ゆっくりと散歩するように楽しむ「ポタリング」を提案しています。下川とポタリングの相性の良さ、そしてその魅力についてお話を聞きました。田中さんと一緒に自転車に乗って巡った町内の風景と共にお届します。(取材時期 2025年7月)

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地蔵サイクル
住所 下川町西町188-3
電話番号 080-5459-9498
MAIL jizoucycle@gmail.com  

URL https://sites.google.com/view/jizoucycle
※ツアーの詳細については問い合わせを。

穏やかな空気を味わうのに、ぴったりな速度で。

道北のまち・下川にも、緑の季節がやってきました。心地良い季節を思い切り味わいたくて、今日は自転車でまちを巡ってみることにします。案内人は、地蔵サイクルの名でガイド業を営む田中康之さん。散歩するようにのんびりと走る、「ポタリング」の楽しみを教えてくれました。

朗らかな笑顔でガイドをしてくれる田中さん。ユニークな屋号は、町内に住む女性から提案を受けて決めたものだそう。

 「下川は市街地がコンパクトで、ちょっと走るとすぐに〝郊外感〟を味わえるんです。何より都会と比べて車が少ないので、のんびりと走るのにぴったりですよ」。その言葉どおり、市街地を出発してほんの数分で視界はぐんと開けて、森や牧草地などの緑いっぱいの景色に。

市街地を過ぎてすぐの橋から眺めたパンケ川。パンケとはアイヌ語で「下」という意味で、町名の由来にもなっているのだそう。

「この季節はやっぱり、『緑』が良いですね。まちの外に出かけて帰ってくると、緑の多さに改めて驚くほど」と、自転車を停めて話す田中さん。その後も少し進んだら、「この景色が良くて」とひと休み。この〝のんびり具合〟が、ポタリングの醍醐味。まちを流れる穏やかな空気を味わうのにぴったりな速度です。

ツアー時はコンパクトな電動アシスト付き自転車をレンタルできます。

旅行者はもちろん、移住希望者を自転車で案内することも。「自転車は自由な乗り物。ゆっくり自分のペースで漕ぎながら、良い景色をたくさん見つけてもらえたらうれしいです。本当に、良いところがたくさんあるから」。

すれ違う町民たちと手を振り合い、何気ないまちの風景に度々立ち止まって。このまちでのポタリングを誰より楽しんでいるのは、田中さん自身かもしれません。

田中さんに聞く、〝下川×ポタリング〟のすすめ

1.誰もいない一本道をのんびり進む

車通りが少ない道が多いので、安心してポタリングが楽しめます。お気に入りの景色をひとりじめできるのもうれしいポイントです。

2.休憩は多め。「楽しむ」のが一番大切。

ツアーの走行距離は、平均10~15 km程度。自転車は電動アシスト付きなので、体力に自信がない人でも安心。「リピーターさんが来てくれると、漕ぐよりお喋りメインになることも…」と、田中さん。風景を前に、「放牧地の向こうに下川の観光スポット・万里の長城が見えるんですよ」と教えてくれました。

3.実は冬でも大活躍。日常の交通手段として。

ガイド業以外に、自転車の修理も受け付けている田中さん。「普通の自転車でもタイヤ交換をすれば冬でも使える」とのこと。田中さんのアドバイスにより、通年自転車を愛用する移住者もいるそう。もちろん、ツアーでの体験も可能です。

移住を考える際、多くの人が気になるのが冬場の運転事情。車を持たずに移住する人にとって、「冬でも自転車に乗ることができる」というのは新しい発見かもしれません。

田中さんとスロウ編集部の往復書簡

取材を通して感じたことを訪ね、お返事をもらう文通企画です。

田中さんが「自転車の自由さ」を一番に感じるのは、どんなときですか?
立田

ありきたりですが、自らのエネルギーと動力でペダルを漕いで前に進むことができるところでしょうか。化石燃料を燃やして排気ガスを出すことがなく、音も静かなので自然界と一体になれているような気がします。ゆっくり歩きたかったら自転車を押して、もっと遠くに行きたかったら自転車を折りたたんで鉄道やバスで運んで。僕自身そうやっていろんな土地を旅してきました。そんな楽しみ方ができるのも自転車の魅力だと思っています。
田中

下川町で活き活きと自分なりの暮らしを営む人々の物語は、特集「下川町で、スロウ日和」からのぞくことができます。定期更新中ですので、ぜひ寄り道してみてくださいね。トップページは上のボタンから。記事の一部をこちらに掲載します。

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この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.84
「北国の緑を描き留める」

四季折々の北海道の自然を、それぞれのフィルターを通して、それぞれのやり方で表現する人々のもとへ。十人十色の作品から、北国の色彩の豊かさや、表現の可能性を改めて教えてもらいました。

この記事を書いた人

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立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。