来る日も来る日も、カレーを磨き続けて〈ばぐぅす屋〉

岩見沢市美流渡という集落にひっそりと、でも存在感を強く放つ店。営むのは、スパイスカレーの探求に勤しむ一人の女性です。さっぱりとしていて率直な印象を受ける彼女。母として、料理人として。独学で学んだスパイスの調合を武器に、今日も店を開きます。

Shop Data

ばぐぅす屋
住所 岩見沢市美流渡本町23-1
電話番号 080-3232-3036
営業時間 11:00~16:00
定休日 月・木曜

「住みたい」と感じた北海道で

「朝と夕方が静か。そこが美流渡(みると)の好きなところです」。しんと静まりかえった朝には始まりの活力を感じ、日が暮れる頃の静けさは心を落ち着かせてくれる。車通りは少なく、住んでいる人も多くはない。岩見沢市美流渡という集落にひっそりと、でも存在感を強く放つ店がある。

店を営む山岸槙さんは大阪府出身。高校生のとき、生まれて初めて北海道を訪れ、陸別町で酪農の仕事をしながら夏休みの1ヵ月間を過ごした。「ずっと都会で育ってきたのに、〝懐かしい〟と思いました。住んでみたくなった」。その後、オーストラリアやアジアなどへ旅に出たこともあったけれど、不思議と「住みたい」と感じたのは北海道だけだったそうだ。

結婚し、夫の実家のある岩見沢へやってきたのは25歳の頃。第1子を出産して料理に関心を持ち、スパイスの調合次第で可能性が広がるカレーに辿り着く。元々、自分の店を持ちたかったという山岸さん。店舗として利用できそうな空き家を探したものの縁がなく、店が決まったのは2018年。6年の月日が流れていた。

地元毛陽(もうよう)産のブルーベリーを使ったスムージー。りんご、ハスカップも。さっぱりとしていてゴクゴク飲める。

3年以上経った今も、日替わりで新作に挑戦し続ける

「最初は南インド、次はスリランカのカレーを作ってみたり。なぜ勉強するかって? カレーが好きだから」。開店から3年が経ったが、今も日替わりで新作に挑戦する日々を送っている。言うは易し、行うは難し。でもさらりとやってしまうのが山岸さん。気づけばカレーの種類はどんどん増えて、『ラムミートボールやさい』、『くるまふやさい』などの変わり種も誕生した。ほとんどのメニューの語尾に「やさい」が付いているように、どれも岩見沢産の野菜がたっぷり。スープはすっきりとした味わいで、野菜がもりもりと食べられる。

今、美流渡にはアクティブな30~40代が集まってきている。さっぱりとしていて率直で、料理の腕を磨き続ける山岸さんもそのひとり。店と共に、地域での存在感を増している。美流渡にはもうすぐ雪深い季節がやってくるが、今年は初めて冬の間も店を開けるという。

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.65
「羊の傍らで」

可愛いだけではなく、いのちの尊さをも身をもって教えてくれる羊たち。幸せを感じたり、感謝したり、悩んだり。羊との、それぞれのつき合い方。

この記事を書いた人

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猿渡亜美

剣山がきれいに見える十勝の山奥で、牛と猫とキツネと一緒に育ちました。やると決めたらグングン進んでいくタイプ。明治以降の歴史や伝統に心を揺さぶられ続けています。