然別湖のほとりを歩けば

おさんぽ日記#01
歩いた場所 然別湖のほとり
日にち天気 10月のある日、晴れ
考えたこと 散歩をするのは、どうして?

おはようございます。スロウ編集部たつたかんなです。今日は、おさんぽ日記第1回!ということで、私の大好きな場所のひとつ、然別湖の話をしたいと思います。

然別湖は、鹿追町と上士幌町にまたがる湖です。スロウ編集部のある帯広からは、車で大体1時間といったところ。標高810mと高い場所にあって、帯広から鹿追の市街地を過ぎてずっとまっすぐ、ぐんぐんと車で坂道を進みます。湖の東側に望めるのが、天望山。その山の姿から「唇山(くちびるやま)」と呼ばれていて、然別湖のシンボル的な存在として知られています。

然別湖に来たら、まず会いに行くダケカンバの木。太い幹が湖に向かって伸びていて、私はなんだか、この木の根元から眺める然別湖が大好きです。時々、遊覧船が湖を進む音や、カヌーを楽しむ人の声が聞こえてきます。私はここで、ひと休み。

そう、今日はもしかして紅葉が見ごろかなと思って来たのですが、山のほうの広葉樹は、ほとんど葉っぱを落としていました。標高の高いこの場所には、ふもとのまちよりひと足早い秋がやって来ます。

よし、そろそろ歩きに行きますね。

然別湖の南側にある白雲山、の登山口にやって来ました。白雲山は地元の人に人気の山。私も何回か登っていますが、大体1時間半で登ることができますし、頂上からみる然別湖の景色がすばらしくて、いい山です。今日はのんびり歩きたい気分なので、山には登らず、然別湖のほとりの森を散歩することにします。

秋の終わり、ほんの少し冬の匂いのする森。この時期って、いちばん森の匂いを感じるなと思います。どうしてなのかは、わかりません。でも、冷たく澄んだ空気に葉っぱや土のしっとりした匂いが混ざる、この時期の森がとても好きです。

足元では、初夏に白い花が咲いていた、マイヅルソウやゴゼンタチバナ、ツバメオモトが実をつけています。見上げれば、色づいた葉っぱが秋の光に揺れて、時々風にひらひら舞い落ちて。葉をつけたまま冬を過ごす針葉樹は、変わらず緑です。

15分ほど歩くと、ぱっと開けた湖畔につながる脇道に出合います。ここが、今日のおさんぽの目的地。近くで魚が泳いでいるらしく、ちゃぽん!と水のはねる音がします。風が吹けば、湖が小さな波を立てて、秋色の葉っぱがカサカサと揺れて。あ、鳥の声もします。さっきは目の前の枝で、羽根に深い緑色をのぞかせた小さな鳥が仲間と話しているようでした。


水筒に温かいコーヒーを淹れてきたので、いつもの流木に座ってまたひと休み。前に来たときは、ここでパンを食べました。その前は、友だちとピクニックに来たんだったかな。ひとりでも、ふたりでも、何度ここに来たのか、数えきれません。晴れの日も、曇りの日も、いい日も、そうじゃない日も。ここに来て、ひと休みする。気がついたらその時間が、十勝での暮らしの中で大切なものになっていました。

せっかく「おさんぽ日記」という連載を書くことになったので、今日は歩きながら、「散歩するのは、どうしてか」について考えていました。と言っても歩いていたほとんどの時間、木漏れ日や湖のきらきらに目を奪われていたので、頭の端っこで、ちょっとだけ。

いつだったか、誰の言葉だったか。「元気になるとは、〝元の気に戻る〟ということ」と読んだことがあるんですね。その時、その言葉が心にストンと落ちてきました。生活していると、いろんなことがあります。うれしさで胸いっぱいになる時があれば、悲しくてちょっぴり涙が出るような時があって。そういう時の気持ちって、〝元の気持ち〟から大きく揺れていると思うんです。そして、自分らしく暮らしていくためには、元の気持ちに戻って来ることが必要なんだと思います。

私にとって、散歩することは、元の気持ちに戻るために大切なことです。何度も何度も、同じ場所を訪れるのが好きな理由も、そういうところにあるのかもしれません。これから、おさんぽ日記で、またいろいろな答を見つけていきたいです。

座っていたら、また少し風が冷たくなってきました。今日はそろそろ、帰ろうかなと思います。きっとあっという間に冬がやって来るので、次にここを歩きにくるのは、少し先になりそうです。

然別湖のほとりは、今日も変わらず、穏やかでした。

いつかのおさんぽ日記です。

この記事を書いた人

立田栞那

立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。