オレンジの灯りに誘われ、何かに出会える雑貨店〈pastoral〉

帯広市の中心部からやや離れた一角に、オレンジ色の灯りが好奇心をくすぐる小さな雑貨店〈Pastoral〉があります。揃えているのは、北海道を中心とした作家の作品。民芸や本、服飾もあります。店主の中川さんが大切にしたいいくつかの基準で選ばれた、暮らしのもの全般。ここに行けば何かに出会えるような気がして、何度も足を運びたくなるのです。

Shop Data

Pastoral
住所 帯広市西1条南4丁目14-1
電話番号 0155-40-9075
営業時間 11:00~19:00(日曜・祝日は~18:00)
定休日 木曜
URL https://www.instagram.com/pastoral_obo/?hl=ja

雑貨店への夢を心に抱いて

「好きなもの、小学生のときからほとんど変わってないですね」と、店主の中川さん。幼いころから部屋の模様替えが好きで、音楽などの趣味も世間の流行りとはちょっとズレている、いわゆる「サブカルチャー」と呼ばれるものにハマった。そう言いながら、店の奥から取り出してきたのはビックリマンシール! 大切なものは、たとえシールだろうと、長く持っている。幼いころから将来雑貨屋になるための素質をそなえているような少年だったということだろう。

「いつかは好きなことを仕事にしたいけど、ムリだろうな」。そんなことを考えながら、地元の帯広を出て札幌の専門学校を卒業。そのあと8年ほどは正社員として働いた。雑貨店を開くきっかけとなったのは、全国の家具や雑貨などの優れたデザインの良質なものを扱うD&DEPARTMENTの札幌店開業に携わることになったのが大きかった。

会社員として30代を迎え、今後のことを考え始めていた時期。D&DEPARTMENTのセンスが好きで、かつては代表のブログも読みこんでいた中川さんは、開業の話を聞くやいなや飛びついた。ここでのさまざまな経験が、今の中川さんのベースとなっている。

店舗を作り上げるため、北海道や全国各地のクリエイターや作り手とたくさん出会った。知らなかった世界やカルチャーに溺れる日々は中川さんにとって天国のような環境だっただろう。帰りはいつも0時を回っていたほど、充実した時間を過ごした。最初はバイトから始まり、やがて店長の座を任されるまでになった中川さん。D&DEPARTMENTで作る観光雑誌『d design travel』の執筆にも携わることで、「町を俯瞰する」視点が少しずつできていったという。

楽しい町は、自分でつくる

35歳を迎え、そろそろ自分の店でも構えようかと思っていたときだった。東川町の雑貨店「Less Higashikawa」にて岡本仁さんの講演会を聞いた。「自分の町は、自分で楽しくすればいい」。シンプルなメッセージが、心の深いところにストンと響いた。

最近、帯広の街中でも、小さいながら自分の世界観を発信するすてきな人や店が増えている。中川さんの心に、地元の帯広に帰って店を出すという選択肢が、ごく自然に現れた。そして2017年、帯広市の中心部からやや離れた場所に、雑貨店〈Pastoral〉をオープンさせた。

Pastoralでは、主に北海道作家の陶器やガラス、木工の作品。茶筒や箒などの民芸品。服や靴下、本や珈琲豆など、あらゆるものを扱っている。作家をセレクトする基準は、「これからもっと飛躍していくような人たち」。そのため、ここでしか手に取れないような作品も多い。

作家の作品といっても、奇抜な形や個性的な作品は多くない。どれもが少し工業製品っぽく、人の手を感じさせない均一なものが多い。そういうところも、D&DEPARTMENTでの経験が素地となっている。暮らしの傍らにずっと寄り添ってくれるような、飽きのこない「長く使えるもの」がポイントなのだそうだ。

中川さんがセレクトする商品のルールは、いたってシンプルだった。だからこそ選ばれる商品の種類はさまざま。けれどなんだか統一感があるような気がするのは、これまでの人生で感じた「これいいな」という思いを、中川さん自身が大切にしてきたからだろう。

日が暮れてオレンジの灯りがついたら、フラッと寄りたくなる雑貨店。帯広に住む筆者も、たまに寄っては1時間ほどおしゃべりして何か買うのがルーティンになっている。きっと同じように、誰かの帯広暮らしの日常を彩る、大切な店になっていることだろう。

中川さん

「スロウ日和をみた」で、十勝の一番好きな場所を教えます。

この記事を書いた人

スロウ日和編集部

スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。