道北の町、下川町で暮らす人たちを訪ねる特集『下川町でスロウ日和』。今回お話を聞いたのは、NPO法人しもかわ観光協会の事務局長を務める高松峰成さん。2016年、転職を機に東京から下川へ移住しました。東京から地方へというシフトチェンジを経て見つけた価値観や視点の変化。そしてすっかり魅せられてしまった「粘菌観察」というライフワークについて教えてもらいました。※一部写真提供/高松さん(取材時期 2024年2月)
Data
Instagram @hoseitkmt
足元の自然、まちでの暮らしの解像度を上げるように。
NPO法人しもかわ観光協会の事務局長を務める、高松峰成さんのライフワークは、「粘菌観察」。粘菌という名前が付いているものの、菌類でもなく、植物でもない。アメーバ動物の一種とされている不思議な存在です。春先のとある日、うららかな木漏れ日の下には、小さな小さな粘菌の姿を探す高松さんの姿がありました。
写真右のササの葉に付いた小さな粒々が粘菌です。
青森県出身で、下川に来る前は東京で会社勤めをしていた高松さん。30歳を前に転職を決意。移住フェアへの参加を機に、下川町へやって来ました。「東京にいた頃は自分の仕事のことで頭がいっぱいで、社会全体のことまではなかなか考えられなくて。下川で暮らせば、一つひとつの物事を丁寧に見つめられるような予感がしたんです」。東京から地方へというシフトチェンジを経て、社会全体の流れがわかるようになり、町内では歩いてすれ違う人の多くが知り合いに。季節の移ろいを感じやすくなったことも高松さんにとって心地良い変化でした。
粘菌観察を楽しむようになったのも、下川に来てからのこと。コロナ禍に遠出をせずにできることとして森散策を始め、そこで粘菌の面白さに気づいたのだそう。最初はその小ささゆえなかなか見つけられなかったそうですが、観察を続けるうちに「粘菌目」が鍛えられたといいます。まちや森や、自分の周りにある物事すべてに目を向けて、一つひとつの解像度を上げていく。高松さんの働き方にも、ライフワークにも、一つの芯が通っているように感じました。
高松さんの楽しみ・森の粘菌に光を当てる
6月から8月の観察シーズンになると、出勤前や休日など、時間を見つけては森で粘菌を探すのが高松さんの日課。「じめっとした日陰にいることが多い」とのこと。この日はカラリとした良い天気だったため、残念ながら姿は確認できず。「環境に合わせて、たった1日で姿形が劇的に変化するところが面白いんです!」。見つけた粘菌は、マクロレンズをつけたカメラで撮影し、Instagram:@hoseitkmtにアップしています。レンズを通して見た粘菌のきれいさに驚いてしまいました。
ササの葉に付いていた黒い粒々をマクロレンズで覗いてみると…。「ルリボコリ」という名前の粘菌です。その名のとおり、紫味を帯びた青色の輝きがとてもきれいでびっくり。
町内で開催される観察会で講師を務めることも。自身が見つけた楽しみを地域の人々にも伝えています。
高松さんの仕事・下川町の文化を観光で伝える
高松さんが思う下川町の魅力は、人々の「飾らなさ」。まちの人々があたりまえのように営む暮らしそのものが魅力なのだと話します。実は下川町はアイスキャンドル発祥の地。冬の寒さを活かして町民が手づくりしたキャンドルを自宅や店先などで灯していたのが始まりです。その風習が今も文化として根付いてており、毎年2月には「アイスキャンドルミュージアム」というイベントが開催されます。
そうしたイベントの開催も、観光協会の大事な仕事の一つ。「まちに根付いてきた文化を伝えていくことも、観光の役割だと思っています」と話してくれました。
高松さんとスロウ編集部の往復書簡
取材を通して感じたことを訪ね、お返事をもらう文通企画です。
下川へ来て8年目の高松さん。一番大きく変わったのは、
どんなところですか?
立田
良いことも悪いこともすべては自分次第だと前向きに考えられるようになりました。下川に来てからたくさんの人と知り合い対話や体験を重ねたことで、自分の生き方を俯瞰してみられるようになったことが大きいと思います。東京にいた頃と比べると人口規模は極端に小さくなりましたが、立場を気にせずその人の内面や境遇にまで踏み込んで話ができる人の数や機会は格段に増えました。最近は、人間以外の生き物や自然も生きるためのヒントになったりしています。
高松
下川町で活き活きと自分なりの暮らしを営む人々の物語は、特集「下川町で、スロウ日和」からのぞくことができます。定期更新中ですので、ぜひ寄り道してみてくださいね。トップページは上のボタンから。記事の一部をこちらに掲載します。
下川町の移住情報はコチラ