大沼のほとりで営む小さな焼菓子店〈三月の羊+喫茶ねこひ〉

三月の羊は、2001年に東京で始まった焼菓子店です。最初は芹沢章正さんがひとりで営んでいた店に、久子さんが加わって、コーヒーと絵本も楽しめる店に。2004年、思い描いた暮らしを叶えるために2人は七飯町へと移住。自然あふれる大沼のほとりで、道産素材を使った素朴な焼菓子を作り始めました。2019年に、三月の羊の焼菓子と飲み物が楽しめる喫茶スペース「喫茶ねこひ」が完成したと聞いて、2人のもとを訪ねてみました。(取材時期 2020年10月)

Shop Data

三月の羊・喫茶ねこひ
住所 七飯町字上軍川9-11
電話番号 0138-67-2077
営業時間 10:00~16:00

定休日 月~水曜
URL http://rumlamb.tea-nifty.com

東京から移り住み、叶えた家族の暮らし

三月の羊の物語は、2001年に東京で始まった。最初は章正さんひとりの店。2004年に久子さんが加わり、ふたりの店へ。喫茶部門を開設し、章正さんが焼菓子とパンづくり、久子さんがコーヒーと絵本の紹介を担当していた。

芹沢章正さんと久子さん、次男の駒生(こまき)君。駒生君は長男の二丸(にまる)くんと一緒に店を手伝うことも。

当時のふたりの夢は、「いつか、家族と緑に囲まれた場所で暮らしたい」というもの。元々、手に職を付けて将来は田舎で暮らしたいと、お菓子の道に進んだ章正さん。2人で約5年、一緒に店を営む中で、その思いは自ずと大きくなっていく。2010年、2人は大沼のほとりへと移り住んだ。

まずは無理せず、家族の暮らしを大事にしよう。子育て中だったこともあり、最初は通信販売を中心に。2012年からは、自宅の一画に店舗を構え、土曜日だけ対面販売を行った。そんな風に、家族みんなで時間をかけて、大沼での暮らしを築き上げてきた。

四季の移ろいと焼菓子を楽しむ空間を

「やっと、自分たちの畑でブルーベリーが採れるようになりました」とは、章正さん。ベリー類が採れる季節は、タルトなどにも取り入れているそうだ。

風が吹いて日が差し、店周辺の緑がひと際輝く。その風景を見て、「この場所が、特別なご馳走のように思えるんです。秋には紅葉が本当にすばらしいし、もっと寒くなると湖が凍る。季節ごとの変化が印象的で、お話の中にいるみたい」と、久子さんが微笑んだ。

奥の母屋で製造、手前の建物で喫茶と焼菓子の販売を営んでいる。

自宅兼店舗の隣に、小さな喫茶室をオープンさせたのは、2019年夏のことだ。「東京時代のように、コーヒー片手にゆっくり過ごしてもらえる場所をずっと作りたかった。今、移住前に思い描いていた暮らしがやっと現実になった気がして、とてもうれしいです」。

大沼の自然と、どこかほっとする素朴な焼菓子。それらによく合う、おいしいコーヒーを楽しむ穏やかな時間。三月の羊の物語は、これからもここで、優しく紡がれていく。

羊のイラストが可愛らしい「ラム缶」は、お土産にもぴったり。中身はメレンゲの焼き菓子。
スロウ日和編集部

3/18~21に開催する「スロウなお買い物展in spring」にも焼菓子が並びます!

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.65
「羊の傍らで」

可愛いだけではなく、いのちの尊さをも身をもって教えてくれる羊たち。幸せを感じたり、感謝したり、悩んだり。羊との、それぞれのつき合い方。

この記事を書いた人

アバター画像

立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。