大工とミートパイ、2足の草鞋で〈PIE ME〉

オーストラリア出身のカール・ディアカさんは、オーストラリアで出会った妻の地元が登別市であったことから、6年ほど前に北海道へとやって来ました。日本語が堪能で、いつも元気。そんなカールさんが、長沼町の市街地に2021年にオープンさせたのが、pieme。オーストラリアのソウルフードである、ミートパイを出す店です。大工としても活躍するカールさんに、暮らしと仕事と家族のことを聞きました。(取材時期 2022年1月)

Shop Data

PIES&COFFEE PIE ME(パイミー)
住所 長沼町銀座北1丁目5-2
営業時間 10:00~16:00
定休日 火曜
URL instagram.com/pieme.me

オーストラリアのソウルフードを、長沼で

「ミートパイは、家庭の味。piemeのミートパイのレシピは、おばあちゃんの味を基にしています」とカールさん。幾重にも重なった薄いパイ生地は、サックリとした食感で、中身のビーフシチューはお肉がゴロゴロ。たっぷりケチャップをかけていただくのがオーストラリア流だから、シチュー自体への味つけは少々控えめに。パッと見は小さく思えるが、食べてみるとボリューム満点で、軽めのランチにも十分なほど。ドライブ中の観光客や、近隣で働くビジネスマンが次々に立ち寄っては、カールさんと言葉を交わし、ミートパイを買っていく。

カールさんが長沼町で暮らし始めたのは3年半ほど前のこと。それ以前は江別市で暮らしていた。オーストラリアからの移住にあたって、Googleマップを使い「札幌の近くで一番大きなグリーンスペース(緑地)」を探したというカールさん。初めに見つけたのが、江別市の森林公園のそばだった。その後、オーストラリアにいた頃から交流のあった長沼町の農家さんのもとへ遊びに行くなどするうちに、長沼町を魅力的に思うようになっていったという。現在は店舗から少し離れたところにあるアパートに暮らしながら、自身の家をDIYで建設中。実はカールさんは、大工でもあるのだ。

大工とミートパイ、二足の草鞋を履く

去年はほとんどpiemeの切り盛りに追われてしまったものの、本来は、週に2~3日はpiemeで、週に2~3日は町内の大工yomogiyaの中村直弘さんの相棒として大工仕事。そんな暮らしが、カールさんが求める日常だ。「親がDIYをする人だったから、大工には興味があって。未経験で日本語も上手じゃないからできないと思ったんだけど、中村さんは『全然大丈夫!』って言ってくれて。本当にいい経験になっています」。空き時間を見つけながらコツコツと自宅をリノベーションするのも、大工としての「いい練習」になっているという。

ほうれん草を使ったギリシャのベジパイ「スパナコピタ」。チーズのうま味が強く、満足感たっぷり。

ミートパイの店を始めたのは、yomogiyaが主催するマルシェに参加したことがきっかけ。物販や飲食の出店が並ぶ中、やはり人気なのは「食べ物系」。飲食のお店がもっと充実していたらいいのに、と思うと同時に、「なぜミートパイの店がないのだろう?」と疑問にも思った。ちょうどそんな折、大工の仕事として改装のために訪れた町内のカフェで、近くの店舗が空くという話を聞かされる。「チャンス!!」と思ったカールさん。さまざまな条件が揃い、ミートパイ専門店開業への道が繋がった。人と人との縁で北海道・長沼に来て、店舗となる建物にも出合うことができた。長沼町の人が好きだから、提供する商品の材料にはできる限り近くのものを使いたいと考えていた。

オーストラリアではエスプレッソも毎日欠かさず飲むのだとか。パイとコーヒーをセットでどうぞ。

現在piemeで購入できるパイは5種類。スタンダードなミートパイと、チーズミートパイ。それに期間限定のパイが1種(この日は鶏肉・ナス・シイタケのパイだった)。加えて、スパナコピタと呼ばれる、ほうれん草を使ったギリシャのベジパイと、ブルーベリーとブルーチーズのパイ。パイに使うジャガイモやキノコ、ブルーベリーなどは町内の農家から仕入れたものを使っている。


オーストラリアにいた頃、レストランで働いていたカールさん。自身はキッチン担当ではなかったが、名だたるシェフたちと交流を持ち、その味にも触れてきた。各国料理の調理法にも造詣が深く、たとえばブルーベリーパイなら、生とジャムとラクト(発酵)、3パターンに調理したブルーベリーを使って味に深みを出している。

パイは450円から、コーヒーは400円から。電子マネーにも対応可能。

家族との時間を楽しむ、スローライフ

「家族と一緒であることが、すごく大切」と、カールさん。オーストラリアにいた頃は忙しく、1日15時間労働もあたりまえ。疲れ果てて帰るのが日常だったそうだが、「今はスローライフ」。去年は開業準備で忙しかったというが、それでも、現在10ヵ月の次男が開業前日に産まれたという話や、4歳になった長男が店頭で店番をしてくれるという話を、うれしそうに話してくれた。スノーハイキングや雪板など、近郊で楽しめるアウトドアにも挑戦しているというカールさん。これからもっと、家族との大切な時間が増えていくに違いない。

スロウ日和編集部

カールさんが大工として一緒に働いている町内の大工、yomogiyaの中村さんのエピソードは「色のある手と、大きな笑顔。まちの大工、「yomogiya」に会いに。」で紹介中。

この記事を書いた人

片山静香

片山静香

雑誌『northern style スロウ』編集長。帯広生まれの釧路育ち。陶磁器が好きで、道内はもとより全国の窯元も訪ねています。趣味は白樺樹皮細工と、木彫りの熊を彫ること。1児の母。