日常の中に、キャンドルを灯す習慣を〈アロマテラピーサロンilo〉

アロマテラピーサロンiloを営む、アロマセラピストの森禄子さん。人の心の疲れを癒やす仕事に就いているからこそ、自分自身の心身の状態を整えることを大切にしています。そのために昔から大切にしてきた習慣が、キャンドルを灯すこと。日常のなかで、無理せずキャンドル生活を送る方法をたくさん教えてくれました。「自分を大事にする時間を持つことで、人生はもっとすばらしいと感じることができるはずです」と語ります。

Shop Data

アロマテラピーサロンilo
住所 旭川市永山5条20丁目1-9
URL http://ilo.bz

キャプション

仕事のストレスを癒やすために始めた、キャンドル生活

旭川市の住宅街にある、アロマテラピーサロンilo(イロ)。扉を開けると、広い玄関の奥で薪ストーブが燃えている。一歩入って中を覗くと、飾り棚の上にぽつん。リビングにも、ぽつんぽつん。昼間なのに、あちらこちらに小さなキャンドルが灯っている。「日中はお客様のために、玄関から入って奥のソファに座るまで、小さな光が誘導していく感じがいいなと思って」とは、店主でアロマセラピストの森禄子さん。

ガラスのホルダーに入ったティーライトキャンドル、縦長の瓶に入ったソイキャンドル、白樺の樹皮をまとったキャンドル…ざっと数えただけでも5個のゆらゆらと揺れる小さな炎が、森さんの暮らしを包んでいた。

「社会人になってから、ずっとキャンドルを焚いている気がします」。遠軽町出身の森さんは、学校を卒業すると帯広や札幌で就職。ひとり暮らしの日々の中で、キャンドルを眺める時間が習慣化していった。「緊張からでしょうか、働き始めるとストレスがたくさんあって」。

最初の仕事は、交通巡視員。常に他人と接する上に、慣れない生活だったこともあり、リラックスできる方法を探した。「ひとりで自分に向き合う時間が私には必要だとわかって。その時に、キャンドルのような静かに見守ってくれるモノの存在が助けになりました」。

気分に合わせて、3種類を使い分ける

もうひとつ、森さんがキャンドルに惹かれた理由。「母がお茶の先生で、お香を焚いたりする人でした。“静”の中で自分を見つめる習慣は、子どもの頃からあったのかもしれません」と振り返る。

森さんにとって、キャンドルは日常的に使うもの。使い続けるうちに細部にいろいろと不満が募ってきた。「最後まで燃えなかったり、芯が埋まってしまったり。そこで自分で作ってみようと調べ始めたら、天然のキャンドルに辿り着きました」。作り始めたらそれほど難しくはなかった、と森さん。「愛着も湧くから、灯すのも楽しい。そして惜しげもなく使える。気に入った器はリピートもできるんです」。いま愛用しているのは、蜜蝋、はぜ蝋、ソイキャンドルの3種類。特徴に合わせて、森さん流に使い分けている。

「蜜蝋は、その時々で表情が違う。燃え方も硬さもいろいろなんです。やっぱり動物由来、男の子って感じ(笑)」。対して、木の実が原料であるはぜ蝋は、「日本で昔から使われているものだし、神聖な気がします」。そう言いながら、木芯に火を点けてくれた。「このパチパチという音もいいですよね。浄化のキャンドルを作りたくて、セージを加えたんです」。満月の夜、今日は気の流れが悪いなと思う日、心がざわざわしているときなどに焚くのだそう。

普段使いにするのは、一番扱いやすいソイキャンドル。「自分用に作るときは、ガラス瓶に入れて、と決めています」。器のないキャンドルは、途中で蝋を捨てたり、形を整えていかなければいけない。「それはそれで楽しいけれど」と前置きした上で、「私が必要としているのは、造形が魅力的なものより、手をかけなくていいもの。一番大切にしたいのは、キャンドルが灯っている時間なんです」。
こだわりたいのは、ホルダーを通して広がる光や、ガラスに映り込む炎の影、その美しさ。

「ほら、覗いてみてください」。森さんが差し出したのは、高さ20センチほどのガラス瓶に入ったソイキャンドル。上部には、透明のオイルが層を作っている。「キャンドルを作るときに、施術で残った植物オイルを入れるんです。そうすると蝋が少し柔らかくなって、灯すと上のほうが融けて、まるで水面に炎が浮いているようで美しい」。

普段使いはガラスに入ったソイキャンドルを。

融けたキャンドルに、精油を一滴

さらにそこに精油をほんの数滴。アロマセラピストならではのひと工夫も素敵だ。「こうすれば、その日の気分に合わせて、毎晩違う香りを選ぶこともできるんです。炎の熱で少し感じられるくらいの、わずかな香りなんですけど」。森さんが好きなオレンジの花の精油、ネロリを垂らしてくれた。神経を集中しないと感じ取れないくらいのささやかな印象。「今の世の中には強い香りがたくさんあるけれど、それに慣れてしまうと嗅覚が鈍ってしまう。昔の人は『かそけき香り』という美しい言葉を使いましたが、微かな香りを嗅ぎ取っていく感性を失いたくないという思いもあるんです」。

森さんがアロマテラピーに興味を持ったのは、7、8年前だった。「息子のテニスサークルで一緒になったお母さんが、ハンカチを取り出した時にとってもいい匂いがしたんです。『なぁに?』と尋ねたら、ラベンダーの精油をつけていると教えてくださって」。それまでは、香水をはじめとする人工的な香料をまったく受け付けなかった森さん。「自分にも大丈夫な香りがあるんだと知って、一気にアロマテラピーの世界にはまっていきました」。すぐに資格を取得する教室に通い、2年ほど夢中で勉強し、5年前にサロンをオープンした。「アロマテラピーって、奥が深いんです。植物の作用は香り以外にもいろいろあって、それは植物が生きていくために必要なことだったりする。知れば知るほど面白くなって、自分のライフワークにしようと決めました」。

たとえばフランキンセンスの精油は、木の幹を切ったとき修復するために湧き出てくる樹脂だ。「私たち人間の肌への効果も期待できます」。植物の自然治癒力、その恩恵にあずかりながら、森さんは日々施術をしている。


「仕事上、私はお客さまの心の動きや体の疲れを受け止める側。だから私自身が整っていなければ、と思っています」。キャンドルと暮らしてきた森さんが、今、改めて大切だと感じているのが、キャンドルと過ごす時間。入浴後、後は寝るだけという状態で、大好きな本を読みながら過ごす。時間は決めない。

30分のときもあれば、1時間以上に及ぶ日も。こうして森さんは、一日のリズムを整える。「日中は気持ちが“陰”になることが多いので、その後に筋トレなどして“陽”に変える。そして一日の最後にゼロに戻ってくるのが心地いいんです」。

日々の施術を通して森さんは、「自分のことを後回しにして頑張っている人が多い」と実感している。整えないままだと、必要以上にカリカリしたり、幸せな気持ちになれなかったり。その結果、心と行動がどんどんかけ離れていってしまうのでは、と危惧する。「自分を大事にする時間を持つことで、人生はもっとすばらしいと感じることができるはずです」と、その必要性を教えてくれた。

疲れたら眠りたい、心が傷ついたら何らかの力を借りて癒やしてあげたい。私たち人間だって、自然治癒力を持っている。それをきちんと発揮できるように、いつだって整えていたい。森さんのキャンドルの時間をお手本にして。

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.58
「キャンドルに灯す思い」

美しく豊かなキャンドルのある暮らし。炎のきらめきを見つめれば、次第に心が凪いでいくのを感じられる。

この記事を書いた人

スロウ日和編集部

スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。