手づくりの家と工房で。二人三脚の木工作家〈前島商店〉

ユニークな木工作品を生み出す前島拓也さん。「家を造ってみたい」と考えていた妻、野原さんと出会い、彼女の実家がある新得町へ移住しました。自宅の目の前にある工房でものづくりをする前島さん。薪ストーブを焚き、にぎやかな子どもたちに囲まれて、田舎暮らしを楽しんでいます。

Shop Data

前島商店
住所 新得町字新内西1線125-8
電話番号 090-5569-7262
URL https://nobata.exblog.jp

セルフビルドの自宅、納屋を修理した工房で

木工作家の独立は簡単ではない。まず機械を揃えて工房を開く。始められたとしても、作品が売れないと生きてはいけないのだ。

前島拓也さんは東京の明星大学造形芸術学部を卒業後、旭川市にある東海大学芸術工学部に進学した。1年目は研究生として、2年目からは聴講生をしながら旭川市科学館「サイパル」で木工担当として勤務。拓也さんの発想力はそこで磨かれた。たとえば動物パズルは子ども向け木工教室の課題にヒントを得ている。仕事と作品づくりを並行し、2014年の国際家具コンペティションではブロンズリーフ賞を受賞。その頃、妻の野原さんと結婚した。 

2人は当初、旭川と新得で別居生活を送っていた。理由は新得町出身の野原さんが東京から北海道へ帰ってきた背景にある。「都内の飲食店で働くなかで、自分で家を造ってみたいと思ったんです」。高校から東京へ出た野原さん。「父のことをあまり知らず東京に来た。家づくりの経験がある父と一緒に家を建てて、同じ時間を過ごしたい」。最初は野原さん1人と犬1匹が住む家のつもりで始めた大工仕事。時は流れて、拓也さんというパートナーが現れ、子どもが生まれて増築することに。「父がいないと進まないんです(笑)」野原さんが言うように、塗装途中の壁もちらほら。しかし外見はセルフビルドとは思えないほど立派だ。さらに野原さんの父は敷地内の古い納屋を修理して「良かったら工房にも使えるよ」と拓也さんにすすめた。これが新得へ移り住む決め手となったという。

拓也さんは「手で持ったり、座ったり、使いやすいのはもちろんですが、目で見ても美しいと感じるものを作っていきたい」と話す。拓也さんが作り、野原さんが販路を広げる二人三脚。「前島商店」という名に、2人の関係性が表れていた。

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Q&A

Q
開業時にかかったお金はどのくらいですか?
A

木工作家の独立で大変なのは機械を揃えることですが、ちょうど作品づくりをやめるという作家さんがいて、その方から一式20万円で購入することができました。新たに購入したのは糸のこなど数台です。

Q
自身で建てたという家の造りを教えてください。
A

屋根とユニットバスはプロにお願いしましたが、それ以外はすべて自分たちで施工しました。断熱材をしっかりと入れていて、寒さはそれほど感じません。

この記事の掲載号

北海道十勝・移住の本 りくらす vol.4

自分らしい生き方、より良い子育て環境を求めて、あるいは家族や仕事の都合で。北海道への移住を選択した人を訪ねる「りくらす」。

この記事を書いた人

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猿渡亜美

剣山がきれいに見える十勝の山奥で、牛と猫とキツネと一緒に育ちました。やると決めたらグングン進んでいくタイプ。明治以降の歴史や伝統に心を揺さぶられ続けています。