「札幌に店を構えていた〈奥泉〉が、東川町に移住して店をオープンしたらしいよ」。カフェ好き、情報通の人たちの間で密かな話題になっていたこのお店。ここは、ゆっくり心ゆくまで、中国茶とおかゆを味わうためのお店です。ランチラッシュになるお昼時に店を閉めるのも、ゆっくり味わってほしいということへの、真摯な思いがあってこそです。朝早くに開いているというところも、うれしいポイント。朝の身体に温かく沁みる中国茶とおかゆを取り込めば、きっとその日はスロウ日和になるでしょう。
Shop Data
中国茶とおかゆ 奥泉
住所 東川町東4号北2
電話番号 0166-56-0280
営業時間 7:00~11:00(冬期は8:00~)、13:00~16:00
定休日 火・水曜
URL https://www.instagram.com/okuizumi_s/
中国茶を心ゆくまで楽しむための店
かじかむ手で、奥泉の扉を開いた、1月の朝。ふわふわと漂う湯気と一緒に、注文した中国茶とおかゆが運ばれてくる。小さな急須にコポコポとお湯を注げば、辺りにはたちまちいい香り。おかゆを一さじ口に運ぶと、優しい温かさが空っぽのお腹に広がって、寒さに縮こまっていた身体が、ゆっくりとほぐれていく。
薪ストーブの温もりが心地良い店内で、中国茶を淹れているのは、富士子さん。10年以上前から、どっぷりと中国茶の世界に浸っている。その魅力を尋ねると、「何煎も楽しめること、かな。お湯を注ぐ度に、茶葉がゆっくり開いて、香りと味が変わるんですよ」。使う茶葉は、「中国の福建省というところに、本当においしい茶葉を育てて炭で焙煎している人がいて。その人のって決めて仕入れています」と、教えてくれた。
厨房で料理を作るのは、裕樹さん。「店のメインは中国茶。だから最初にメニューを考えた時も、『お茶を楽しむための料理』が前提にありました」。あえてお昼時を外して営業しているのも、「ゆっくりお茶を楽しむために、足を運んでもらいたい」という思いから。
メニューはおかゆを中心に、水餃子やスープ、蒸した饅頭やマーラカオなど、素朴で温かいもの。「できるだけ、おいしいものを」と、餃子の皮からスープに使う豆乳まで、すべて手作りしている。
元々札幌で店を営んでいた2人は、おいしい水を求めて2019年に東川町へ移住。店も移転オープンさせた。
おいしい水を求めて、大雪山のふもとのまちへ
「この場所に辿り着くまで、2年かかりました」。
それから2人は口を揃えて、「味がもう、本当に変わった」とうれしそうに笑う。お茶の香りの出方が、ぐんと良くなった。おかゆには、大雪山由来の水と、その水で育つ米の味が、まっすぐに表れた。2人の笑顔も、清らかな味わいも、すべてはおいしい水があってこそ。
(取材時期 2020年5月25日)