ひと皿からはじまる、おいしい表現。〈シカク 谷山嘉奈美さん〉

道北の町、下川町で暮らす人たちを訪ねる特集『下川町でスロウ日和』。今回お話を聞いたのは、谷山嘉奈美さん。2021年に名古屋市から移住し、2024年にジビエ料理を気軽に味わえるビストロ「シカク」を開きました。食への関心からジビエ料理との出会い、「白いキャンバス」のような下川というまちでの生活についてお話を聞きました。(取材時期 2025年2月)

Shop Data

シカク
住所 下川町南町208
電話番号 070-8905-3642
開館時間 12:00~14:30、18:00~21:00
定休日 不定休
Instagram
@shikaku_gibier

真っ白なキャンバスのようなまちに、ヘルシーな彩りを。

「下川は、白いキャンバスのようなまちという表現を聞いたことがあって、本当にそうだなと思うんです。ここにいると自分も何か表現して良い、表現してみたいという気持ちになるから」。そう笑顔で話してくれる谷山嘉奈美さんが営む店の名前は、「シカク」。真っ白なキャンバスのイメージと、「シカを食う」という文字並びから名付けた、ジビエ料理を気軽に味わえるビストロです。

コース料理で提供している前菜プレート。「料理もアートの一部。調理から盛り付けまで、私なりの表現ができたらと思いながら作っています」。写真はシカ肉のパテをメインにしたひと皿で、見た目にも華やかで、味わいや食感も豊かで満足感たっぷり。

「シカ肉は北海道各地の猟師さんから仕入れていて、できるだけどんな子だったのか話を聞くようにしています。たとえば、山で山ブドウをたくさん食べていた子だと聞いたら、ベリーのソースと合わせてみようかなとか。それぞれ個性があるんですよね」。そんな会話をしながらいただけるのも、小さなビストロならではの楽しみです。

昔から食への関心を強く持っていたという谷山さん。あるときレストランで食べたジビエ料理のおいしさに目覚め、自分でも作ってみようと素材について調べる中で、野生動物と農業被害の問題を知ったそう。「川下での消費を増やしたい。そのためには、まずおいしさを知ってもらうこと。ジビエ料理を身近に楽しめる場所をつくれたら」という思いから、2024年11月にシカクをオープンしました。

店があるのは、市街地の一角。「町の人が気軽に歩いて来られる場所で店を開けたのがうれしい」と、谷山さん。店内は白を基調に、植物などが飾られた下川らしさのある空間です。

谷山さんには、料理のほかにも、サウナマニアという一面も。実は移住の経緯にもサウナが関係していたのだとか。「サウナで汗をかくと感覚がとてもクリアになる。その後に食べる料理としてジビエはぴったりだと思うんです」。一見意外な組み合わせですが、表現次第ではユニークでヘルシーな試みに。そしてそれもまた、谷山さんらしい表現と言えるのでしょう。白いキャンバスのようなまち、下川に。また一つ、おいしくて豊かな彩りが生まれていました。

キッチンのタイルは、改装を手伝ってくれた仲間たちとみんなで描いたもの。モチーフは、谷山さんが憧れたフランスの画家・モネのキッチンで使われているタイル。ちなみにロゴマークは、画家がデッサンをするときに指で四角を作るポーズから。

谷山さんとスロウ編集部の往復書簡

取材を通して感じたことを訪ね、お返事をもらう文通企画です。

下川で自分のお店を持てて良かったなと感じているのは、どんなことでしょう?
立田

これまでは町内外で間借りをしてジビエ料理をスポット的に提供してきました。実はほかのエリアも候補にいれて物件を探していたのですが、やはり下川町が好きで、たくさんの人が応援してくれたこともあり、下川町で自分のお店を持つことができました! 下川の魅力は、面白い人がたくさんいるところ。これから一緒にコラボしたりして、ジビエの魅力を何倍にもできるような実験をたくさんしていきたいなとわくわくしています。ちょっとおしゃれをして出かけたり、大切な人と過ごす場所として、町の皆さんが集まってくれる場所になれたらうれしいです。
谷山

下川町で活き活きと自分なりの暮らしを営む人々の物語は、特集「下川町で、スロウ日和」からのぞくことができます。定期更新中ですので、ぜひ寄り道してみてくださいね。トップページは上のボタンから。記事の一部をこちらに掲載します。

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この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.82
「愛し、焼き菓子」

お菓子づくりの主要な原材料が豊富に生産される北海道。そこで暮らしおいしいお菓子を焼く作り手たちの思い、私たちの「お菓子が大好き」という気持ちを一冊に込めました。

この記事を書いた人

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立田栞那

花のまち、東神楽町生まれ。スロウの編集とSlow Life HOKKAIDOのツアー担当。大切にしているのは、「できるだけそのまま書くこと」。パンを持って森へ行くのが休日の楽しみ。