森で働き、遊び、暮らす。〈株式会社 田邊林業〉

道北の町、下川町で暮らす人たちを訪ねる特集『下川町でスロウ日和』。今回お話を伺ったのは、下川町内で昨年の夏に林業会社を設立した田邊大輔さんです。自分が「これだ!」とピンと来た場所で暮らしながら、働き、遊ぶ。そんなことが出来たらどんなに良いでしょう。まさしく、田邊さんはそれを実現させた人。少年のようにキラキラと目を輝かせながら聞かせてくれた森のお話に耳を傾けました。(取材時期/2021年12月)

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株式会社 田邊林業
住所 下川町北町237
TEL 090-6690-3504
お問い合わせ https://www.facebook.com/daisuke.tanabe.182   

町内の9割を森林が覆う下川町。昔から林業が盛んに行われるなど、森が身近にある暮らしが営まれてきました。

田邊大輔さんは、そんな下川で森のある生活を満喫する一人。「森に関わりながら、仕事も遊びもしたくて」、林業に就くことを決意し2004年に移住。数年前には暮らしをもっと森に近づけたいと、町内の森を購入。家族とピクニックへでかけたり、仕事終わりに大好きなスノーボードをしたり。森遊びの計画で何やら楽しそうです。

田邊大輔さん。森の話をする姿は本当に楽しそう。「木は昔から友達のような存在なんです」と、とびきりの笑顔をみせます。

仕事の面では、昨年7月に造林・造材を請け負う会社を設立。林業に加え、前職で培ったデザインなどのスキルを活かした事業も行っています。

質の高い素材づくりができる林業と、想像力を働かせるものづくり。異なる分野を結びつけるのは、田邊さんの根底にある「良いものを長く使ってもらえる、ものづくりがしたい」という揺るぎのない思い。こう思うようになった背景には、精油事業や残材の活用など、従来の「伐って売る」という枠に留まらない林業を展開してきた下川町のこれまでの歩みがあります。森林との共生を追求してきた先駆者たちの存在は心強く、田邊さんの背中を押してくれたことでしょう。

林業からものづくり、そして森遊びまで。「森の中ではやりたいことがたくさん見つかって。大変です」。困ったように笑いながらも、少年のようにキラキラと目を輝かせる田邊さん。そこには、未来の森の美しい姿がありありと映っているようでした。

自然のサイクルに反しない、田邊さんの森づくり

2019年に手に入れた田邊さん念願の「自分の森」。その森を一緒に歩きながら聞かせてくれたのは、 自然本来のサイクルに従った 「森づくり」のお話でした。

いざ、深い雪に覆われた森へ。日当たりが良かったからか、不思議と寒くはありませんでした。

場所は、町の中心地から10分ほど車を走らせた山の上。下川へ移住してからというもの「自分の森をもちたい」と土地を探していた田邊さん。「この場所を訪れた人が心落ち着く場所になるよう、整えていきたいです」。夏はピクニック、冬は雪遊び…などなど。アイデア次第で遊び方も無限に広がります。

自然のサイクルに反しない、森づくり

同じ種類の木が整然と並ぶ人工的な森とは違い、さまざまな樹種や樹齢の木が生える田邊さんの森。その中から、将来木材として利用するために育てていきたい木に目印をつけ、その成長を妨げそうな周りの木々を順番に伐採。同時に若い木や幼木を育成していくのが、田邊さんが行う森づくりの方法です。

この日、目印をつけたのは、天に向かって真っ直ぐに伸びた樹齢60 ~ 70年のミズナラ。「寿命が長く、幹が太くなるミズナラやイタヤカエデなどを残して、寿命の短いシラカバなどを伐っていきます」。つまり、人の手が入らなかったとしても最終的に残っていく樹種を同じように残しているのです。

田邊さん

田邊さんが思う森づくり
自然のままだと森の移り変わりに約100年かかるところを、この管理方法だと短縮することができる。人の手を入れるメリットはそこにあると思います。間伐した木々は、薪として利用したり、家具を作れば、思い入れの強いものが出来上がると思うんです。どの木をいつ伐り、どう使うか。その活用方法についても今後のライフスタイルにあわせて柔軟に考えていきたいです。

下川町で活き活きと自分なりの暮らしを営む人々の物語は、特集「下川町で、スロウ日和」からのぞくことができます。定期更新中ですので、ぜひ寄り道してみてくださいね。 

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この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.70
「北のチーズは、脈々と」

北国の風土に寄り添ったチーズづくり。この地で脈々と継承されながら、独自の変化を遂げてきたその技術は、これから先も、未来へと繋がっていく。

この記事を書いた人

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スロウ日和編集部

好みも、趣味もそれぞれの編集部メンバー。共通しているのは、北海道が大好きだという思いです。北海道中を走り回って見つけた、とっておきの寄り道情報をおすそ分けしていきます。