道北の町、下川町で暮らす人たちを訪ねる特集『下川町でスロウ日和』。今回お話を聞いたのは、臼田健二さん。下川町の木を使って、「木ならではのものづくり」を手がける作り手です。森と向き合いながら、作り、遊ぶ日々のこと。森のようだと話す町の印象について紹介します。スロウ78号の巻頭テーマ「冬を見つけに、外へ」にちなんで、冬の楽しみ方についても聞きました。(取材時期 2024年2月)
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Instagram @kenji.usuda.woodworking
URL https://kenji-usuda.com
豊かな森のようなまちで、作り手として暮らす
臼田健二さんは、「木ならではのものづくり」を手がける作り手です。代表作の「ナチュラルエッジボウル」は、森に育つ木そのままの佇まい。「建材や家具に使われる針葉樹と違って、広葉樹のほとんどがパルプ材になってしまうんです。でもこの作り方なら、丸太の状態から木の形や樹皮を残して器を作ることができる。そう思ったのが始まりでした」。
静岡県出身で、元々は東川町で作家活動をしていた臼田さん。森との距離が近く、地元の木を使ったものづくりができる環境に惹かれて、今から8年ほど前に下川へと移り住みました。移住後ほどなくして憧れだった「自分の森」を持つ機会にも恵まれ、深く森に根差した生活を送っています。
臼田さんから見たまちの印象について尋ねてみると、こんな答が返ってきました。「森みたいだなと思うことがあります。森の中にはいろんな種類の木が生えていて、それぞれがうまく太陽の光を分け合っているでしょう。ここで暮らす人たちも一人ひとりが自分のポテンシャルを活かして、それぞれの場所でがんばっていると思うから」。
日々森と向き合いながら、そこで育まれる木を作品という形に残し続けること。それが、豊かな森のようなこのまちで臼田さんが見つけた光。そんな臼田さん自身もまた、光の下で着実に根を伸ばす一本の木のような人だと感じました。
臼田さんに聞く この冬の過ごし方とその楽しみ
スロウ78号巻頭特集のテーマ「冬こそ、外へ」にちなんで、臼田さんの冬について聞いてみました。
冬も変わらず、ものづくり
冬の始まり、工房には制作途中の作品や木材が所狭しと並んでいました。来年の展示会のスケジュールも決まっているそうで、この冬もコツコツと作品づくりに向き合う予定とのことです。「都会に行くのは少し苦手ですが、展示会を通して実際に器を使ってくれる人と直接顔を見て話せるのはとてもうれしい。そういうつながりを大切にしていきたいと改めて感じています」。これまでは森林組合から材料を仕入れていましたが、数年前から町内で木材の競りが行われるようになったのも臼田さんにとってうれしいできごとのひとつです。展示会のお知らせは、Instagramから確認を。
冬の裏山で、雪板遊び
「冬はやっぱり、雪板ですね」とうれしそうに話す臼田さん。「近所にとても見晴らしの良い裏山があって、晴れた日にはオホーツクのほうまで見渡せるんです。そこまで登って行って、雪板で下りてくるというのが楽しくて」。雪板はもちろん手づくり。町内にも雪板好きな仲間たちがたくさんいて、天気を見ては外に出かけて、冬の裏山ハイクや雪板遊びを楽しんでいます。(写真提供/臼田さん)
臼田さんの好きな木は?
森の王様だと思っているのはナラ。女王様はカエデかな。北海道の森だと最終的にはナラやカエデのような木が生き残るんですね。たとえばナラなら500年近く長生きする。その力強い感じがとても好きです。カエデは材が白くてきれい。木目がおとなしく、木肌が緻密で色が白いところが「女王様ポイント」だと思っています。樹種ごとにさまざまな個性があって、それを活かしたものづくりをしていきたいです。
臼田さんとスロウ編集部の往復書簡
取材を通して感じたことを訪ね、お返事をもらう文通企画です。
下川町で暮らし、「自分の森」を持ったことで、どんな変化がありましたか?
立田
森の一部を整理して、光が入り、くつろいで過ごせる空間を作りました。ツリーデッキも作って、天気の良い休日はハンモックに寝転んだり、焚き火をしてのんびり過ごしています。そんな生活の中で、木が「単なる素材」ではなく森の一部であることや、小鳥や動植物にさまざまな恵みをもたらしているんだということがより実感できるようになりました。気に対する畏敬の念や愛着も深くなって、作品づくりにも良い変化が出ているように感じています。「マイ森」で過ごす時間、とても充実していますよ。
臼田
下川町で活き活きと自分なりの暮らしを営む人々の物語は、特集「下川町で、スロウ日和」からのぞくことができます。定期更新中ですので、ぜひ寄り道してみてくださいね。トップページは上のボタンから。記事の一部をこちらに掲載します。
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