フォーとケーキとコーヒー。洞爺湖のほとりの飲食店〈yucana〉

『鶏肉のフォー』。本場と同じように、レモンやチリソースを足して好みの味に調整できる。

yukanaの店舗は、築40年ほどの民家を改装した味わいのある建物。店主が長年修業を重ねてきた、鶏だしのきいた絶品のフォーをはじめ、思わずうっとり噛みしめたくなるスイーツも。冬季も営業しているところもポイントです。店の前の道路を挟んだ向こう側には、毎日違う表情を見せてくれる洞爺湖が広がります。

Shop Data

yucana
住所 洞爺湖町洞爺町146-6
電話番号 0142-82-4739
営業時間 12:00~16:00(L.O.15:00)
定休日 金曜、日曜不定休
URL Facebook:@yucana
お酒好きな方要チェック 店主セレクトのクラフトビールあります。

冬は薪ストーブが店内全体を優しく暖める。

カジュアルな距離感が、心地よい空気感を生み出す

訪れたのは冬の始まり。白い雪が薄く積もった静かな湖の畔に、yucanaが佇んでいる。

閉店まであと1時間。もうすぐ日暮れだけれど、店内には話し声が交差する。食事を終えてひと息ついている人、コーヒーとケーキをお供に本を読む人、テイクアウトでケーキを買っていく人…。冬季はほとんどが地元客だと話す店主の藤井由香さんは、客のみんなと親しげで、そんなカジュアルな距離感が店内に流れる心地よい空気を生み出しているようだ。

札幌で15年間培ったベトナム料理の腕を活かす

yucanaがオープンしたのは2013年。札幌で約15年間、ベトナム料理店のオーナーとして調理と経営に携わってきた由香さんだが、2012年の結婚を機に店をたたみ、洞爺湖町へ移り住んだ。以前の店は、もともと所有していた会社から、オーナーとして譲り受けたものだったから、料理に使う材料も作り方もある程度決まった形があった。次に開くなら「もっと自分らしい店にしたい」と、店の形態がどんな風になっても良いように「由香らしいな」をもじった店名を付けた。

看板メニューは、由香さんが札幌時代に15 年腕を振るっていたベトナム料理のフォー。可愛らしいベトナム食器に注がれたスープをひと口飲むと、鶏だしの優しい味わいと主張しすぎないナンプラーの香りが広がる。あっさりとした後味で、お年寄りや小さな子どもにも受けがいいという。

食材はなるべく近くで手に入るものを使い、手作りケーキも無添加にこだわる。それが、由香さんが誰かに食べてもらいたいもの、自分が心から作りたいと思えるものだから。

冬季も営業。洞爺の人たちとの協力関係で成り立つ暮らし

「洞爺は冬期休業の店が多くて。それが嫌で、冬の間も地元の人が通える通年営業にしました」。いち住人として感じていた、町の寂しい一面に光を投じる。そこには、家族のように互いを気遣いあう、洞爺の人々への愛情が込められている。自分に偽りのない店を構え、そこに住人たちが集う日々。「毎日が同窓会みたいなんですよ」。そう話す由香さんの晴れやかな表情が忘れられない。

(取材時期 2018年2月25日)

この記事の掲載号

northernstyle スロウ vol.54
「愛しの小さなまちへ」

キーワードは、「まちづくり」。地域に暮らす人が中心となり、時には周囲の手を借りながら、より魅力的な場所を自分たちで作っていく取り組みを紹介します。

この記事を書いた人

家入明日美

家入明日美

火の国・熊本出身。野生動物の勉強がしたくて北海道へ移住し、自然のことを伝えたくてスロウ編集部に入る。馬とナキウサギ、やんちゃな飼い猫と怒髪天が心のオアシス。